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一昨年脱北して韓国で暮らしていた脱北者キム氏が、元日に軍事境界線のフェンスを乗り越えて北朝鮮に戻る事件が発生した。当初、北朝鮮側の動きは全く察知されていなかったが、実際は事件直後から動いていたことが、デイリーNKの内部情報筋からの情報で明らかになった。

(参考記事:北朝鮮に戻った脱北者、周囲から「変わった人」との声

情報筋によれば、元日の夜、北朝鮮側最前線の望遠鏡監視哨所(監視塔)に勤務する人員が、南朝鮮(韓国)から人がやってきたことを発見し、第1軍団の指揮部が02網無線通信(最高司令官の金正恩総書記へのホットライン)で最高司令部に報告した。これは、今回の事案を重要と見なしていることを示す。

軍団、師団級の指揮部にのみ設置しているこのホットラインは、通常上から下へと命令を伝えるときに使われるが、このような緊急時には下から上への報告にも使われるという。

報告を受けた最高司令部はその直後、総参謀部作戦局に対し、該当地域に駐屯する師団に1号戦闘勤務体制を発令して6日まで維持させることを指示した。また、師団を通じて兵士に実弾30発を支給し、24時間戦闘服着用で勤務体制を維持することも指示した。

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一方、江原道(カンウォンド)の非常防疫指揮部の人員が総動員され、事件が発生した哨所と近隣の舎宅(軍人用住宅)地域を封鎖し、消毒作業を行った。しかし、密入国した脱北者がその場で身柄を取り押さえられたため、民間人の居住地域に関しては消毒作業は行われなかった。

脱北者キム氏は当初、第1軍団の営倉管理隊に勾留されていたが、現在は元山(ウォンサン)にある江原道保衛部(秘密警察)の基地に隔離されている。現地に派遣された平壌の国家保衛省の捜査班が取り調べを行っているが、15日間キム氏の状況を観察し、問題がなければ平安南道(ピョンアンナムド)に身柄を移送して、さらに尋問を行う予定とのことだ。

一昨年7月に起きた脱北者密入国事件では、北朝鮮はロックダウンを行い、韓国を非難するなど国営メディアを含めて大騒ぎしたが、今回はすべてを秘密裏に処理しており、報道も一切行われず、韓国軍が北朝鮮に発送した通知文にも何ら反応を示していない。

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現地でもかん口令が敷かれているとのことだ。

「(脱北者が)やってきた地域に駐屯する部隊と兵宅地区、保衛部関連者など周辺の人々のみが(今回の事案を)知っており、現在、かん口令が敷かれている」(情報筋)

(参考記事:コロナ封鎖の北朝鮮・開城で食糧配給…当局、市民の不満に緊張

その背景について情報筋は、今月8日の金正恩氏の生誕記念日、2月16日の光明星節(故金正日総書記生誕記念日)80周年、4月15日の太陽節(故金日成主席の生誕記念日)110周年など、北朝鮮で最も重要とされる記念日が整周年(5や10で割り切れる特別な意味を持つ年)を迎える2022年の元日から、騒ぎ立てたくないという心理が働いたのだろうと、幹部の反応を伝えている。

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重要な記念日の前後は警備が強化され、事件事故の発生は一切、許されない。にもかかわらず、こんな大事件が発生したことは、国や最高指導者の権威にも傷をつけ、国内に動揺をもたらしかねないという判断もあったのだろう。