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北朝鮮の五戸担当制――朝鮮労働党の「熱誠党員」のいる1世帯と、一般住民の4世帯をひとくくりにして、政府や党の方針を末端の隅々にまで伝えると同時に、相互監視を行うための組織だ。1958年に金日成主席の提唱に基づいて始められたが、1973年に20~40世帯をひとくくりにした人民班(町内会)として、発展的に解消された。

金正日政権の最末期の2010年、後継者に内定していた金正恩氏は、国境沿いの地域における五戸担当制を三戸担当制として復活せよとの指示を出したが、その後も人民班が機能し続けていることから、指示は徹底せずに有耶無耶になったものと思われる。

それから10年余り。五戸担当制に再び復活の兆しが現れつつある。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:金正恩氏、五戸担当制から三戸担当制の変更を指示

情報筋が伝えたのは、道庁所在地の恵山(ヘサン)市内で先月1日から始まった、「五人一組組長制」というものだ。これは、5世帯をひとくくりにして、うち1世帯が当局の指示や課題を他の4世帯に伝えるというもので、五戸担当制と似たようもののようだ。

このような制度が導入された背景には、新型コロナウイルスがある。

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コロナ前、人民班の会議は1ヶ月に少なくとも5回開かれると同時に、会議が多い月には、回覧帳(回覧板)が回され、「政府の布置(布告)の内容を読んだ」と署名することを求められていた。

ところがコロナ防疫体制下では、クラスター発生のリスクがあることから、極めて重要な事案があるときを除いては、人が大勢集まることができず、会議を開く代わりに、回覧帳を回して済まされることが多くなっていた。これにより、政府や党の方針がきちんと伝わらなくなっていると当局は判断したようだ。

(参考記事:北朝鮮、コロナ対策ガン無視の新年ライブで感染者か

ちなみに今年2月からは、住民の署名が書かれた回覧帳を受け取った人民班長は、その日のうちに洞事務所(末端の行政組織)の長に返納するようになっている。住民に伝えられる党の方針や政策の中には、外部に漏れることを当局が嫌がるものもあるが、流出事件が後を絶たないためだ。

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(参考記事:「食糧の横流しは戦時法で処罰」北朝鮮、内部文書で警告

それでも流出事件が後を絶たないことから、両江道人民委員会(道庁)は今年10月、洞事務長の緊急会議を開き、人民班の回覧帳の使用を停止し、代わりに「五人一組組長制」を通じ、政府と党の方針を口頭で伝える方式にせよと指示を下した。

これに伴い、恵山市内の人民班では、「五人一組」の編成が急速に行われているとのことだ。指示を文書ではなく口頭で伝えることにより、内容をメッセンジャーアプリを通じて外部に流出させる行為を防止する目的がある。また、コロナ鎖国による経済難により思想的な緩みが起きていると指摘されているが、そのような変化についてより詳しく観察するという目的があるようだ。

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ただ、これが定着するか、全国的に広がるかなどについては、今のところ未知数だ。