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北朝鮮の国営朝鮮中央テレビは、昨年大晦日の夜11時から50分間、平壌の金日成広場で開かれた新年祝賀公演を生中継した。

2021年をかたどったネオンが光る舞台の上には、次から次へと歌手やダンサーが現れ、広場を埋めた人々は光を放つサイリウムを手にして、音楽に合わせて笑顔で踊り続けた。ライブは、新年を祝う花火で締めくくられた。昨年のものに比べるとかなり地味ではあったが、とても新型コロナウイルスの超特級非常防疫措置の発動中とは思えないほどの華々しさだった。

(参考記事:北朝鮮が「超特級非常防疫措置」発動…移動制限は50日間

そもそも人が集まることが禁じられているはずだが、国が主催するものだけあって、例外扱いだったのだろう。ソーシャル・ディスタンシングも全く守られていない様子だった。

公演には老若男女が区域、職場単位で参加したが、出発前にチェックを行った上で、広場の入口でも、動員された中区域などの5ヶ所の防疫所の幹部、職員、医師が参加者の検温とマスク着用チェックを行っていた。これでは無症状感染者の発見などできないが、案の定そのしっぺ返しが来た。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、新年祝賀公演に参加した後から、発熱する人が相次ぎ、13日の時点でわかっているだけで32人に達した。

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普通江(ポトンガン)区域の慶興洞(キョンフンドン)の党秘書を務める55歳のチョさんら2人が、公演に参加した後で高熱と呼吸困難の症状を見せ、3日後に亡くなってしまった。

遺体は、郊外の五峯山(オボンサン)の斎場で火葬され、遺骨は消毒した上で、家族の元に返されたという。また、コロナ感染が疑われる患者は、家族も含めて自宅で隔離されている。平壌には、隔離施設がないからだろう。

(参考記事:3割が生きて出られない…北朝鮮コロナ隔離施設の劣悪な実態

超特級非常防疫措置の発動中にもかかわらず、なぜこんな大規模公演が行われたのか。

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「党の歴史上、祖国の青史(歴史上の記録)に長く刻まれる、特記すべき行事(朝鮮労働党第8回大会)が開かれる年なので、例年の新年祝賀公演とは異なり、政治的熱意を持って参加し、大転換の雰囲気を醸成することについての党の指示があったから」(情報筋)

(参考記事:飢えた北朝鮮の一家が「最後の晩餐」で究極の選択

派手好きで見てくれを重要視する北朝鮮らしい発想だが、長期に渡る封鎖令(ロックダウン)で外出できず、餓死する人が相次いでいる地方の人々の目に、平壌の盛り上がりぶりとその後の疑い患者の急増はどのように映っているのだろうか。