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アフリカのタンザニアで、北朝鮮から派遣された医師が、患者に対して正体不明の薬を投与するなど不適切な治療を行い、病院が閉鎖される事件が起きたのは2016年のこと。

北朝鮮製の薬に関しては、韓国の食品医薬品安全処(FDA)の検査で、最高で基準値の20万倍の水銀が含まれたものが発見されるなど、眉唾ものが少なくない。

(参考記事:基準値20万倍の水銀を含有…北朝鮮の漢方薬は「毒のかたまり」

こうした正体不明の医薬品による健康被害は北朝鮮国内でも起きている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、最近起きた医療事故について伝えた。

被害に遭ったのは清津(チョンジン)に住む23歳の女性。顔にできた吹き出物の治療を受けるべく、咸鏡北道病院を訪れた。診察にあたった医師は、吹き出物は悪性腫瘍、つまり皮膚がんの疑いがあるとの診断を下し、「高麗医学(漢方)的弁証治療方法」で治療を受ければ、肌がより白くなり皮膚がんも消えるだろうと、この方法で治療を受けることを推奨した。

医師が事前に説明した副作用は、「数日程度、軽い痛みがある」ということだけだったという。

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今回の「治療」について情報筋は、内閣保健省が臨床試験の資料に基づき、液体酸素を使って顔の皮膚をピーリングするものだったと説明したが、この「高麗医学的弁証治療方法」の全体像は謎に包まれている。

北朝鮮の対外宣伝メディアの「黎明」は先月8日、「高麗医学的弁証治療方法の積極活用」と題した記事で、「保健省の皮膚専門病院で、皮膚病治療に効果のある価値ある医学科学技術を研究完成し、臨床実践(試験)に積極的に取り入れている」と報じている。

ウッドランプと呼ばれる、日本のエステでも使われている特殊な紫外線を照射して診断を行い、患者の体質と症状に合わせて治療を行うとしているようだ。しかし、具体的な治療法としては漢方薬と鍼灸の組み合わせとしか書かれておらず、どのような薬が投与されるのかは不明だ。ちなみに記事は、この治療法が乾癬、じんましん、脱毛に効果があると紹介している。

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詳細はわからないものの、上述した北朝鮮の医師がタンザニアで行ったインチキ治療と相通ずるものがある。

さて、治療を受けた女性だが、施術後に顔面に火傷の症状が表れ、麻酔が切れた後には様々な痛みがあると訴えている。1カ月が過ぎてもよくならず、現在は一人部屋に移されて治療を受け続けているが、女性の顔が正常に戻る兆しが見えないと、情報筋は伝えた。

そして、実は彼女が受けたものは治療ではなく臨床試験だったことを知った家族は激怒。道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)に信訴(告発)し、強く抗議した。道党は、咸鏡北道病院に対する調査を行い、検察所を介入させ、医療事故を起こした容疑で担当の医師を連行させた。

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(参考記事:若い女医の死で幕を閉じた北朝鮮「恐怖病棟」での出来事

一般庶民なら、かなりの額のワイロを積まなければまともな治療をしてもらえない国営病院で、イカサマだったとは言え「治療」を受け、家族が医療事故の被害を公に訴えたことを見ると、女性とその一家はそれなりの社会的地位にあるものと思われる。

この医師は取り調べに対し「カネを受け取って治療をしたわけではなく、充分な説明も行った、私を拘束し続ければむしろ治療中の患者がもっと困ったことになる」などと陳述した。

また、病院側は「この治療法は咸興(ハムン)で多く行われている副作用のないもので、顔に傷が多くある女性が好んで受ける」「わが病院では初めての導入で起きたことで、医療事故か否か見定めるにはもっと時間がかかる」などと釈明しているとのことだ。

さらには家族に対し、「カネを渡す、治療も最後まで行い完治させる」と伝えているが、家族は納得しておらず、担当の医師が処罰を受ける可能性が高いと情報筋は見ている。

(参考記事:蔓延するチフスに「正体不明の新薬」で対処する北朝鮮