国際社会の経済制裁により、深刻な外貨不足に陥っていると可能性の高い北朝鮮は、制裁に抵触しない様々なものを輸出し外貨を稼ぎ出している。
河原に生えているアシ、山になっているブルーベリー、そこらじゅうに生えている大麻など、手当たり次第に輸出しているが、どれほどの儲けになるかは甚だ疑問だ。
一方で北朝鮮は、比較的単価の高い漢方薬の輸出にも力を入れている。
韓国の聯合ニュースは今年1月、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の関係者の話として、昨年1月から11月の間にモンゴルが北朝鮮から輸入した品目の1位は医薬品だったが、うち78%が「クムダンー2」だと報じた。
「クムダンー2」とは、ガン、肝炎、不眠症、慢性大腸炎、糖尿病、肝硬変などなどありとあらゆる病気に効くというのが謳い文句の北朝鮮の「世紀の大発明」だ。
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本当ならばノーベル医学賞ものだろうが、韓国の食品医薬品安全処(FDA)が2016年にこれらの漢方薬の成分分析を行ったところ、別の意味で驚愕の結果が判明した。
血圧を下げる薬として使われる安宮午黄丸からは、4万229.9ppmの水銀が検出された。これは基準値(0.2ppm)の20万倍を超える数値だ。ヒ素は3万6273ppmで、基準値(3ppm)の約1万2000倍、鉛は19ppmで、基準値(5ppm)の約4倍に達した。
また、強心作用がある牛黄清心丸からは水銀が6938.3ppm(基準値の約3万倍)、ヒ素も4772ppm(基準値の1600倍)が検出された。これでは病気に効くどころか、単なる毒のかたまりだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方で、入っているはずの成分はそっくり抜け落ちてしまっている。
韓国の国立科学捜査研究所が昨年行った分析によると、北朝鮮製の熊胆には主成分であるウルソデオキシコール酸が全く含まれていないことが明らかになった。また、脳心麝香(じゃこう)には麝香成分が入っておらず、代わりに基準値の数倍から数十倍の重金属が検出された。
問題の漢方薬は、製薬会社や研究所ではなく、国家保衛省(秘密警察)、偵察総局、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)系列の貿易会社が製造していることが多い。主な輸出先だった中国では信頼できないとの悪評が立った上に、核やミサイル実験で対北朝鮮感情が悪化したことで、もはや売れなくなってしまった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「北朝鮮で製造している漢方薬に偽物が多いことが中国の消費者にも知れ渡り、あまり売れなくなった。買うのは外国人観光客ぐらいだ」(中国吉林省延吉のデイリーNK情報筋)
両江道(リャンガンド)出身の脱北者によると、もともと北朝鮮は、麝香や熊胆などの高級な漢方薬剤がそんなに採れるところではないという。そのため、かつては市場で豚の肝や犬の生殖器で作られた偽物が売られていたとのことだ。
また、北朝鮮には食品の安全基準が存在しないため、内需用はもちろん輸出用の漢方薬でも何が入っているかわからない。北朝鮮の消費者の間でも偽物が多いことが知れ渡り、手を出そうとはしないそうだ。