ロシアのウラジオストク国際空港のターミナルは、韓国人と北朝鮮人が、交流することはなくとも同じ空間にいて袖触れ合う、世界的に見ても非常に珍しい場所だ。韓国の仁川(インチョン)国際空港と北朝鮮の平壌・順安(スナン)国際空港に向かう便が発着しているからだ。
平壌に向かう北朝鮮人と思しき人々は、肌が浅黒く痩せこけていて背も低い。仁川に向かう韓国人と比べると、生活水準の差は歴然としている。元々同じ国だった北と南だが、かたや先進国、かたや国連から食糧危機を警告されるほどの貧しい国に別れてしまったことが、ひと目で見て取れる。
ウラジオストクから平壌に向かう人の多くは、北朝鮮からロシアに派遣された労働者と思われるが、国連安全保障理事会の制裁に抵触する行為ながら、今でも派遣が続けられている。北朝鮮当局は最近、労働者1000人をロシアに派遣しようと選抜作業を行っているが、問題が発生した。痩せすぎの人が多いのだ。
(参考記事:北朝鮮、制裁を「完全無視」してロシアに労働者を派遣)平壌のデイリーNK内部情報筋によると、当局はロシアの伐採場に派遣する労働者を選抜し、派遣前の教育を行うと同時に、身体検査を実施した。ここで問題が発覚した。体重60キロ以上という条件に満たない人が全体の1割も混じっているというのだ。それがわかったきっかけは、審査に落ちた人による信訴(告発)だ。
(参考記事:「世界に暴露して欲しい」ある北朝鮮兵士の死を告発した一本の電話)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面この人は、選抜担当者にワイロを渡してなんとかロシア行きを掴み取ろうとしたが、体重が基準に満たなかったために不合格となってしまった。
(参考記事:北朝鮮、外貨稼ぎのため海外派遣労働者の応募条件を緩和)一方で彼の知人は無事合格した。体重は基準よりはるか下の48キロだったが、鉄の塊を服の裏地に縫い付け、審査に合格したのだった。それを妬んだ彼は、派遣を司る対外建設指導部に信訴を起こした。
これを受けて、対外建設指導部は選抜した人員全員に対する体重測定をやり直す決定を下し、他の身体検査項目でも不正がなかったかの調査を行っている。不正が発覚した者は派遣対象から除外され、推薦を行った道党(朝鮮労働党の各道の委員会)の幹部部(人事部)の海外派遣労働者推薦資格を剥奪したり、処罰したりする方針を示している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面かつては結核などの伝染病でなければ、海外派遣労働者として選抜されていた。しかし、上述のように北朝鮮からやって来た労働者はひと目でわかるほど栄養状態が悪く、体つきも小さい。対外的イメージを非常に気にする北朝鮮は、身長と体重を重要な選抜基準にしたというわけだ。
「党は当初、カネさえ稼げればいい、痩せていてもどうってことはないという姿勢だったが、最近ではあまりに虚弱な人を送り出すと外国から罪人を送り込んできたのかと言われる。国も人を送り出す際に、世界的な視線を相当重要に考えるようになった」(情報筋)
基準の強化が不正を生み出したわけだが、再検査の結果、全体の1割が基準に満たないことが判明してしまったのだ。海外に行こうとする人は、最貧困層ではなく、ワイロを支払えるほどの経済力がある人だが、それでも1割が痩せすぎとの判定を受けてしまったのだ。これは、北朝鮮国民全体の栄養状態がかなり悪いことを示している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面情報筋は、派遣対象者の栄養状態が今年ほど悪かったことはかつてなかったとして、「虚弱3度」に当たる人が増えていると説明した。この「虚弱○度」というのは、北朝鮮当局が定めた栄養状態に関する3段階の目安で、3度が最も悪い。
(参考記事:「泥炭入りパンを作れ」食糧難の北朝鮮が断末魔の呼びかけ)