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「党代表として来ました」

北朝鮮のありとあらゆる組織は、朝鮮労働党の指導のもとにある。党代表として誰かがやってきても、特に不審に思う人はいないかもしれない。ところが、その正体を知った人々は青ざめたのだった。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が、何が起きたかを伝えた。

(参考記事:北朝鮮国民が鼻で笑う、朝鮮労働党「末端細胞」での力の逆転現象

事は今年7月中旬まで遡る。首都・平壌から党代表として複数の人物がやってきた。彼らは到着早々、恵山(ヘサン)市、三池淵(サムジヨン)市、金正淑(キムジョンスク)郡など、中国との国境に接する地域の洞事務所(末端の行政機関)に配属された。

そんな彼らだが、最近になって国家保衛省(秘密警察)の中佐級以上の幹部で、地元当局の幹部の監視のためにやってきたことが判明したのだ。

彼らは、洞事務所をオフィスとして使い、幹部の動向を観察し、中央に報告していたのだ。特に、この地域は新型コロナウイルス対策の水際に当たる地域。幹部の職務怠慢を取り締まることが何よりも重要な対策だと考えているようだ。

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今年6月29日に開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第2回政治局拡大会議で、金正恩総書記は、コロナ対策において、幹部の怠慢により「国家と人民の安全に大きな危機を醸成する重大事件を生じさせた」と述べたが、国家保衛省の要員が「党代表」を名乗ってこの地域に派遣されたのはその後の7月中旬。何らかの関連があると考えてもおかしくないだろう。

(参考記事:金正恩に赤っ恥をかかせた「重大事件」責任者たちの運命

彼らは一般住民の統制任務も行っているという。朝鮮労働党両江道委員会と、両江道人民委員会(道庁)は最近、住民に向けて「平壌から『党代表』たちが来たので、様々な問題が起きないようにきちんと生活せよ」との布置(布告)を下していることから、何らかの活動を行っていることが読み取れる。

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情報筋は「悪名高い保衛部よりは、党が派遣したイルクン(幹部)という温かいイメージを与え、住民に気楽に接近して、彼らの本音を聞き出し、動きを正確に把握しようという意図」だと説明した。

この地域では、非社会主義・反社会主義現象の取り締まりと称して、住民に対する取り締まり、統制が強化され、次から次へと逮捕者が出ており、地元住民は以前にもまして本音を出さなくなっているであろうことも、今回の「スパイ」派遣とも関連があると考えられる。

(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域