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市場に奪われて久しい経済の主導権を、国の手に取り戻そうと様々な手を繰り出している北朝鮮。しかし、いずれも結果は今ひとつ。有耶無耶になってしまったり、撤回を余儀なくされメンツ丸つぶれになることも。

いくら強権的な国であっても、市場というものはそう簡単にコントロールできないのだ。当局はそれでも懲りずに、市場に手を突っ込もうとしてくる。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:北朝鮮、市場統制計画を撤回…世論の反発を意識

平安北道(ピョンアンブクト)龍川(リョンチョン)郡の情報筋は、女盟(朝鮮社会主義女性連盟)の洞(末端の行政単位)の組織で、メンバーの商売のやり方が批判されたと伝えた。その内容はこのようなものだ。

「市場で商売をしている女盟員たちは、輸入品の調味料1袋を5000北朝鮮ウォン(約115円)で売るのを渋り、少なくとも1万北朝鮮ウォン(約230円)以上の値段を付けようとする。そのように客の足元を見るのは非社会主義文化だ」

デイリーNKの内部情報筋が今年3月に伝えたところによると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)の市場で昨年1月に450グラムに5000北朝鮮ウォンで売られていた中国製の調味料が、今年3月25日の時点で16万5000北朝鮮ウォン(約3795円)と、約33倍に高騰していると伝えた。

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地域と時期が異なるため、現在の龍川での適正価格は不明だが、値段そのものもさることながら、商人が別の商人から買い占めた調味料を、高値で転売していることが問題視されているようだ。

(参考記事:250%もの物価高騰をもたらした北朝鮮のコロナ鎖国

昨年1月以降、北朝鮮ではコロナ対策として国境が封鎖され、貿易が停止されたが、中国と国境を接するこの地域には、船を使って主に調味料、食用油、肥料などが密輸されていると情報筋は説明した。品物が多少は入ってきて、かつてのような極端な高騰は収まったようだが、相場や仕入れ価格を無視して安く売れというのならば、売り惜しみから品薄が広がるだろう。

(参考記事:「待ちきれなくて…」北朝鮮の社長20人、金正恩命令で処刑か

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当局が商売を口実に女盟に対する統制を強化しようとする理由について情報筋は、「組織の規模は決して小さくなく、彼女ら全員が市場での商売で稼いでいる。女盟にはカネがあるということだ。そこで、思想事業強化で女性らを怯えさせて、カネを掠め取ろうとしているのだ」と説明した。

実際、彼女らの商売のやり方を批判した末に、今は国の事情が非常に苦しいので、女盟員が良心を持って寄付を行い愛国者になろうという呼びかけが行われたという。額は決められていないものの、トンジュ(金主、新興富裕層)の場合、相場は1000ドル(約11万1000円)以上だとのことだ。

これに対して地元住民は、当局が市場で商売している人たちのほとんどが女盟員であることを狡猾に利用して、アメとムチを使い分けてカネを掠め取ろうとしていると、そのやり方を批判している。

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一方、平安南道(ピョンアンナムド)殷山(ウンサン)郡の情報筋は、洞の女盟組織が今月25日、「資本主義思想を根絶やしにしよう」という講演会を開いたと伝えた。その内容とは、講演者が壇上から話をするという従来のものとは異なり、動画を見せるというものだった。

「当局が隠し撮りした動画には、コロナ事態で不足する生活必需品を買い占めて高値で転売する商人の姿が収められていた」(情報筋)

動画に登場する商人は、もちろん全てが女盟員だ。続けて講演者は、このような話もした。

「コロナの長期化で社会が無秩序になったすきを突いて、一部の女盟員は資本主義社会で金儲けにさえなるならば、親すらも裏切るような資本家の真似をするのと同じような商売をしている。商売をしても、助け合って導き合う社会主義文化を具現すべきだ」

この話を聞いた女盟員は、「商売は品物を売り買いしてカネを稼ぐ行為なのに、助け合って導き合って商売しろとは一体どういうことか」「商人からチャンセ(ショバ代、市場管理費)を受け取っているくせに、当局は偉そうなことを言えた立場か」などと鼻で笑っているという。