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北朝鮮で6月に行われた朝鮮労働党中央委員会第8期第3回総会では、金正恩総書記が、食糧難に喘ぐ国民に軍糧米を配給せよ、という内容の特別命令書を発したとされている。

これに基づいたと思われる食糧の有償配給が各地で行われているが、「量が少ない」など様々な不平不満の声が上がっている。そんな動きを察知した当局は、さっそく思想教育に乗り出した。

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デイリーNKは16日、「糧穀販売と関連し党と国家の措置をありがたく考え、助け合い導き合う集団主義気風を高く発揮しよう」というタイトルの北朝鮮当局が国内で配布した政治事業(思想教育)資料を入手した。

政治事業資料「糧穀販売と関連し党と国家の措置をありがたく考え、助け合い導き合う集団主義気風を高く発揮しよう」(画像:デイリーNK)
政治事業資料「糧穀販売と関連し党と国家の措置をありがたく考え、助け合い導き合う集団主義気風を高く発揮しよう」(画像:デイリーNK)

冒頭に「党と首領の愛と恩に対しても革命的良心を持ち、真に誠心誠意で応えるべきです」という金正日総書記の「マルスム」(お言葉)を掲げたこの資料。続けて、「直面した食糧危機を克服するために、多くの量の糧穀を国家が定めた価格で住民に販売することについての恩情のこもった措置を行った」とし、食糧危機の事実と、その救済措置としての穀物配給が有償であることを認めた。

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資料は続く。

「ここには、共和国(北朝鮮)の地で暮らす人ならば、誰であろうとも飢える人があってはならないとおっしゃり、人民の安寧と幸福のためにすべての思索と労苦を余すところなく捧げられる敬愛する総書記同志(金正恩氏)の天よりも高く、海よりも深い人民愛が熱くこめられている」

ところが、そんな「ご配慮」に背くような現象が起きていることを資料は指摘、批判している。

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「一部住民たちは恩知らずにも、食糧価格が高いだとか、少し下げてほしいだとか言って、党の愛を値踏みするような不遜な発言を行っている」
「首領が施した愛と配慮に千万分の一も応えるばかりか、不遜な発言、行動を行うことは、この国の公民として到底許されざる恩知らずの行動」
「党と国家の行った措置についてあれこれ言って値踏みするなど、よからぬ発言はしてはならない」

不満と失望の声が上がるポイントは、無償または国定価格に準ずる安価な配給が行われるという期待が裏切られ、価格が意外と高かったこと、配給が予定より1週間ほど遅れたことなどが挙げられる。

「値段が高すぎて貧乏な人は国が販売するコメが買えない」(住民の声)

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さらには「元帥様(金正恩氏)の人民愛と言っているが、これが本当に人民のための政策か」と、際どい批判の声すら上がる始末だ。

ちなみに今回の措置での、コメ1キロの販売価格は、3500北朝鮮ウォン(約70円)から4000北朝鮮ウォン(約80円)。一部地域では市場での穀物価格が2割程度下落したが、量が5日から7日分と少なかったこともあってか、首都・平壌では商人が「配給はどうせ長続きしない」と見て売り惜しみしたことで、価格に変化は生じていない。

資料にはそんな不満も反映され、「正直なところ、今どの家庭も困難に直面しているのは事実で、カネがなく国が販売する食糧を買えない家庭もあるだろう」とした上で、「カネがなくコメが買えない世帯を助け、誰もが党の配慮を受け取れるようにすべき」だと、不満に気を使う姿勢も見せている。

しかし、デイリーNK編集部の取材の結果、「集団主義精神を発揮して自発的に苦しい世帯を助けよ」というのが当局の本音で、当局独自の貧困層対策は存在せず、おそらく住民から金品を徴収し、分け与える形となるものと思われる。

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一方、今回の穀物有償配給は、当局が設置した「国家食糧販売所」の運営安定化も兼ねて行われたのではないかとの指摘もある。

市場での穀物販売を禁じ、国営の国家食糧販売所での販売に一元化、穀物価格を安定させるという計画だが、あまりうまく行っていないと伝えられている。

北朝鮮事情に精通した別の情報筋は「(当局が)市場の状況を詳細に把握し、国家食糧販売による副作用を事前に防ぐための監視と取り締まりに乗り出しているようだ」と述べている。

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資料はさらに、「今回の措置を好機と考え、他の人からカネを借りて多くの食糧を買い込むような非正常な現象が起きてはならない」と、市場価格との差を利用して儲けるためにコメを買い占めようとする動きに対しても釘を刺した。

トンジュ(金主、新興富裕層)は、他の人の名義を借りてコメを買い集めていると伝えられている。当局のやり方の穴を見つけ、儲けようとするものだ。ただ、資料は「説得して正しく教養すべき」と訓告の指示を下すにとどまっている。

食糧事情が極度に悪化している中で、下手に取り締まりを行えば世論がさらに悪化しかねないと見て、当面はソフトな対応にとどめ、現象が収まらなければ強硬策に出るものと思われる。

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