人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

観光客として北朝鮮を訪れると、一般的な先入観とは異なり、案内員(ガイド)から写真や動画の撮影に関して厳しく言われることはない。ただし、軍服を着た人、哨所(検問所)、そして建設現場とそこで働く労働者の撮影はやめて欲しいと言われる。前者2つは保安上の理由からだろうが、建設現場はなぜだろうか。

案内員によって説明が異なり、正確は理由は不明だが、おそらく見栄えを極度に気にているのだだろう。それは、必ずしも外国人観光客に対してだけのことではない。

(参考記事:実は近くて普通に行けるおすすめ北朝鮮ツアー・北朝鮮旅行

東海岸の大都市・咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)の中心部にある浦港(ポハン)広場は、金日成主席、金正日総書記の銅像がそびえ立つ、市内で最も聖なる場所だ。市当局は、平素から市民を動員して銅像の警備や広場の清掃などを行わせていたが、それだけに飽き足らず、広場に公園と噴水を造成することにした。

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は今年3月21日、次のように報じている。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

道党委員会の指導の下に、清津市党委員会は浦港広場の面貌を一新させるための工事を、新たな5カ年計画遂行の初年に実現させるべき主要目標に定め、市内の区域、工場、企業所を総動員して、党の思想貫徹戦、党政策擁衛戦の火が燃え上がるように組織政治事業を行なっている。

今年1月の朝鮮労働党第8回大会で金正恩総書記が示した「国家経済発展5カ年計画」を達成する上で、公園の造成が何の役に立つかは詳らかでないが、おおかた地元幹部の「実績作り」と言ったところだろう。だが、事実上の税金徴収、勤労動員に苦しめられる市民の間では不満が高まっている。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、工事が始まったのは3月中旬で、1.7キロの散策路、噴水、東屋、児童公園を造成する膨大な規模の工事だ。道党委員会(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)は、工事開始に当たって市民を動員して決起集会を開いた上で、建設工事に当たらせている。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

また、市内の各世帯から5000北朝鮮ウォン(約85円)を徴収しているが、勤め先の工場、企業所、組織からも二重、三重に徴収され、世帯が負担する合計額は4万北朝鮮ウォン(約680円)に達している。これは、コメ10キロ分に相当する額だ。

徴収方法もかなり乱暴なものだ。人民班長(町内会長)や組織の責任者は、コロナ対策による経済難でカネがないと嘆く住民に「まだ食べていけているではないか」と、カネの代わりにトウモロコシ、コメ、大豆などを供出させている。

当局の苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)はそれだけにとどまらない。市場の商人を「カネを出さなければ商売ができなくしてやる、払えないなら現場に行って働け」と脅迫し、8000北朝鮮ウォン(約136円)を、4月の1ヶ月間で3回も徴収した。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

乱暴な徴収方法は、上からのプレッシャーのせいだ。各機関には、工事の担当区域が割り当てられているが、資金の調達具合が工事の進捗度に直結する。カネがなければ工事が進まず、工事が進まなければ、総和(総括)の対象になり、厳しい批判にさらされかねないため、必死になるのだ。

さらに、清津市の党委員会の責任書記(市のトップ)や市の人民委員長(市長)も随時、現場を訪れて工事の進捗をチェックしているのだから、現場の担当者はプレッシャーを感じざるを得ない。

コロナ対策で、他の地域との行き来が制限され、物流は滞り、物価は上昇、商売上がったりで、「最大の危機を迎えている」(情報筋)とされる清津だが、市民の暮らしには目もくれず、搾り取ることにしか関心がないお上に対する嘆きと怒りが広まっているようだ。

(参考記事:中国の収容所が「超満員」に…食糧難で脱北者が増加

上述の労働新聞の記事は、市民の苦しみに触れることなくこんな一文で締めくくられている。

噴水公園工事を任された市内の複数の工場、企業所、突撃隊員たちは、昼夜を分かたず熾烈な突撃戦を繰り広げ、任された工事課題を成果的にこなしている。今、浦港広場は日ごとにその面貌が新たに一新されつつある。