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「社会主義教育に関するテーゼ」

これは、北朝鮮当局が先月、全国に配布した思想教育用の資料のタイトルだ。これに基づき、各地で学習会が行われているが、国民の反応は冷淡なものだという。詳細を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市の情報筋によると、道内の全地域で先月初め、この資料に基づいた学習会が行われた。朝鮮労働党出版社が先月2日に発行したこの資料だが、咸鏡北道のみならず、全国の機関、工場、企業所、人民班(町内会)に配布され、それに基づいて各地で学習会が行われている。

清津市の場合、先月5日、12日、19日の3回に渡って1回90分の学習会が行われた。その内容はと言うと、北朝鮮に住む人なら耳にタコができるほど聞かされたであろうことばかりだ。

情報筋の説明を整理すると、概ね次のような内容だ。

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「国の主権を握った労働階級の前には、社会主義、共産主義の建設のための重い課業がある」
「社会主義、共産主義の建設のために、共産主義の思想的要塞と物質的要塞を占領するための闘争を皆で推し進めなければならない」
「すべての人が共産主義的人間として教育され、育て上げられれば、革命と建設が力強く推し進められる」
「それだけあって、社会主義教育は革命の勝敗、民族の将来、運命を左右する優先すべき課業だ」

情報筋はこれについて、「時間が経てば誰も思い出せないような古ぼけた社会主義教育をまた持ち出した」とこき下ろしている。

それは学習会に出席していた他の人々も同様で、講演者が「労働党の正しい教育政策と、懸命な領導により、わが国(北朝鮮)が短い期間に、植民地奴隷教育の残滓を完全に清算し、社会主義教育制度が樹立された」と語るや、「わが国には伝統的な意味での社会主義は形すら残っていない今、社会主義教育とは一体何のことか」と不満を示したとのことだ。

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道内の明川(ミョンチョン)郡の情報筋も、現地で同様の学習会が行われたことを伝えた。

講演者が繰り返したのは
「こんにちの社会で最も切実に求められているのは、他ならぬ社会主義教育」
「社会主義教育はすべての人を自主的で創造的な共産主義的革命人材として育て上げること」
「すべての人を革命化、労働階級化、共産主義化することが、社会主義教育の基本原理」
などといった、旧態依然としたレトリックだ。

学習会に参加した人々の反応も、清津と似通ったものだった。
「社会主義教育は社会主義社会で行うもので、(北)朝鮮の社会主義はすでに形すら消え、歪曲、変質した社会主義なのに、なぜいまさら社会主義なのか」

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カネとコネを持った人だけが、良い学校に進学でき、質の高い教育を受けられるのが北朝鮮における教育の現実だ。入学後も、様々な金品の供出を求められたり、農村などに動員され、まともに教育を受けられる時間も確保されていない。

(参考記事:北朝鮮の少年少女を苦しめる「気持ち悪い」冬休みの課題

そもそも教育の内容にも問題があり、少しでも経済的に余裕のある人は、子どもを塾に通わせたり、家庭教師を付けたりする。公教育が全く信頼されていない結果だ。

(参考記事:塾と家庭教師が増加、ITやダンスの授業も…北朝鮮の最新教育事情

その一方で、供出を求められた金品を出せず、事実上の退学を強いられたり、家計を助けるために、出席簿にハンコだけ押して授業を受けず、農作業や商売を手伝ったりする事例もある。

(参考記事:北朝鮮、無償教育のはずが教育費払えず退学続出の謎

そんな実情を知っている北朝鮮国民に、今さら社会主義教育を云々したところで、空虚なものにしか聞こえないのは当然だろう。おそらく多くの人は、他の政治講演会への出席時と同じように、居眠りをしたり、内職に精を出したりして、下らない話が終わるまで時間を潰していたことだろう。

また、当局者も、とりあえず上から指示された教育を行い、「やってる感」を出せたので良しとするのだろう。かくして、経済活動に使われるべき資源と時間が無駄に使われてしまった。