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北朝鮮の金正恩総書記は、今月15日から19日まで開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第3回総会で、「現物量的にも多く成長しているのをはじめ、国の経済が全般的に興っている」と経済が回復しつつあると主張した。しかし、現実はそううまく行っていないようだ。

資材と資金不足に苦しむ国内の化学繊維工場は、ほとんどが稼働していないという。そんな中でも、どうにか知恵を絞り出し、運営を続けている工場もあるようだ。

(参考記事:金正恩氏「人民の食糧状況が緊張している」…労働党総会で

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が例に挙げたのは、国内屈指の平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)化学繊維工場だ。

まともに稼働できていないのは他の化学繊維工場と同様だが、その理由として情報筋が挙げたのは、薬品の不足だ。

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工場では、ススキを原料に製紙用のパルプを生産していたが、それに欠かせない塩化アンモニウムなどの化学薬品が手に入らなくなっている。コロナ対策として昨年1月から国境が封され、貿易が停止されたことによるものだ。

そんな状況で立ち上がったのは、工場に勤める女性従業員たちだ。少量ながら生産が続けられているパルプを材料にして、生理用ナプキンの表面を覆う紙を生産し、その過程で出る紙の切れ端を集めて破砕し、ナプキンの中にいれる吸収体を製造している。

涙ぐましい努力の結晶であるナプキンは、市場で1袋10個入りが2500北朝鮮ウォン(約55円)で販売されている。これは国から課された生産ノルマには含まれないため、利益は全額、工場の運営資金として使われるという。

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そうやって稼ぎ出した利益も、あっという間に消えてしまう。原料となるススキは、新義州と隣接する薪島(シンド)郡のススキ総合農場で栽培されているが、現地の情報筋によると、ススキの輸送に必要な燃料が国から供給されないため、工場は手押し車、馬車、ポンポン船を動員して、輸送を行っているという。

上述の通り、パルプ生産に必要な化学薬品がないため、国の生産ノルマの達成など考えすら及ばず、ナプキン生産に力を入れ、手に入れた利益でススキを輸送するという自転車操業に陥っているようだ。

ただ、ナプキンは首都・平壌や全国各地にある121号製紙工場で生産されていた国産品と中国製があったが、いずれも市場から姿を消したため、この工場の商品はよく売れているという。

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ちなみに金正恩氏は2018年7月、この新義州化学繊維工場を訪れ、現地指導しているが、同工場で2016年から行われていた「改建現代化事業」の進捗状況に言及。「手入れもしていない厩舎のような古い建物」などとけなし、「支配人、党委員長、技師長らが互いに責任を押しつけあい、誰ひとり正確に回答できていない」などと、激しく叱責している。

ところが、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は今月14日、平安北道の党委員会が、同工場の改建現代化事業を一日も早く終わらせることに大きな意義を付与していると報じている。事業開始から4年経っても工事を終えられないまま、原材料不足の難局に突入し、ナプキン生産で細々と命脈を保っている厳しい台所事情がうかがい知れる。

(参考記事:金正恩氏、工場の管理不備に怒り爆発…従来は担当者ら処刑