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北朝鮮当局が、中国製の医薬品の販売と使用を禁じたのは先月のことだ。金正恩総書記の信任が厚かった経済官僚が、中国製の「コカルボキシラーゼ」、日本で言うところのにんにく注射を打った後に死亡した医療事故を受けてのことだ。

禁止令は、ワクチンの自主開発のために取り寄せたサンプルにも適用されるほどの徹底ぶりだ。

(参考記事:「人体実験」で8人死亡…北朝鮮の製薬業の恐るべき実態

医薬品の多くを中国製に頼っていることから、遅かれ早かれ不足が深刻化するだろうと言われていたが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は現地の情報筋の話として、国内で模造薬が大量に出回っていると報じた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)の情報筋は、市場や薬局でパッケージの色、形、サイズなどが本物と同じの模造品が大量に出回っていると伝えた。情報筋がその理由を、「コロナ鎖国により輸入が止まったため」と伝えているのを見ると、中国製医薬品の禁止令が充分周知されていないか、執行されていない可能性もある。

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昨年1月の国境封鎖と貿易停止以降、コロナ禍で医薬品の需要は増える一方なのに在庫が底をつき、価格は高騰。薬剤師が錠剤1錠を5分割した模造品を販売しているケースもある。

そうやって売られているのは中国製の「正痛片」という薬で、「麻薬成分が含まれている」と情報筋は説明しているが、実際は世界的によく使われているアセトアミノフェン、アスピリン、カフェインの混合薬だ。

この正痛片の模造品だが、価格は昨年比3倍以上の1錠5000北朝鮮ウォン。デイリーNKの調べによると、今月16日に1ドル(約110円)が4900北朝鮮ウォンで取り引きされているので、110円ほどになる。

(参考記事:アヘン混入「ニセ医薬品」販売で捕まった薬剤師に北朝鮮国民が同情

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中国と国境を接する咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)の情報筋も、現地で正体不明の薬が出回っていると伝えた。成分はアスピリン、価格は2錠で5000北朝鮮ウォンだが、飛ぶように売れているとのことだ。

いずれも個人の薬剤師が製造、販売しているものだが、正痛片1錠を5分割したもので、規定の2倍の量を飲んでも効果は微々たるものだと酷評されている。輸入がストップしたことで、それすらも姿を消す日はそう遠くないだろうと情報筋は述べた。

北朝鮮が自慢する「社会主義保険制度」では、誰もが無料で病院で診察、治療、投薬を受けられるはずだが、実際は病院に行っても薬はなく、「市場に行って買え」と言われる有様だ。そんな薬も模造品も消え、病気になれば苦しんで死ぬしかないと、庶民は絶望混じりのため息をついていると情報筋は伝えた。

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今年3月、RFAの別の情報筋は、北朝鮮国内で鎮痛剤のオーバードーズが増えていると伝えているが、わずか3ヶ月で極端な医薬品不足に陥りつつあるようだ。

(参考記事:覚せい剤蔓延の北朝鮮で鎮痛剤のオーバードーズ急増

北朝鮮の金正恩総書記は、今月15日から19日まで開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第3回総会で、「現物量的にも多く成長しているのをはじめ、国の経済が全般的に興っている」と経済が回復しつつあると主張しているが、その内情はかくもお寒いものだった。

(参考記事:金正恩氏「人民の食糧状況が緊張している」…労働党総会で