石炭からウランに至るまで、地下資源の宝庫とされている北朝鮮。今は、国連安全保障理事会の制裁で輸出ができなくなっているが、かつては外貨稼ぎの主力商品だった。様々な地下資源がある一方で、産出に至っていないのは石油だ。
中国との間にある西海(黄海)海底には、かなりの量の石油が埋蔵されているとの説があり、しばしば探査に関する報道がなされるものの、実を結んだプロジェクトは今のところなく、石油は輸入に頼る以外方法にない。
(参考記事:北朝鮮、中国と共同で石油探査に乗り出す)そんな状況で活躍しているのが、動物だ。例えば、協同農場では農業機械の代わりに、農耕用の牛が大活躍しているが、おりからの食糧不足の影響で、死なせてしまう事故が多発している。同じことが、国境警備隊でも起きている。
(参考記事:深刻な食糧難の北朝鮮で牛120頭が大量死)咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、中国との国境に接する穏城(オンソン)郡に駐屯する国境警備隊が飼っていた、パトロール用の馬10頭が今月4日、口から泡を吐いて急に死んでしまったと伝えた。
死亡事故の報告を受けて、平壌の研究者、咸鏡北道の家畜防疫部門の関係者、国境警備隊の旅団、国家保衛省(秘密警察)のイルクン(幹部)が現地に派遣された。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面彼らは現在、死因の調査に当たっているが、研究者や防疫部門関係者は、馬の食べた干し草やエサに問題があったと見て、これらの管理状態に問題があったとの指摘を行ったという。
どのような問題があったのか。専門家は中国から飛来した渡り鳥や、病死した野生動物の排泄物が干し草に混入した可能性を示し、消毒をきちんと行っていたかについて調べている。
北朝鮮当局は、新型コロナウイルスの流入源になりうるとして、国境を自由に行き来する野生動物に加え、家で飼っていたペットに対しても抹殺令を下している。馬に感染するコロナウイルスが存在することが明らかになっているが、馬と人間の間で感染が起こりうるかについてはわかっていない。
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一方で研究者は、馬が感染症にかかった可能性を指摘している。日本の軽種馬防疫協議会の資料によると、馬が口から泡を吐いて死に至る感染症としては、アフリカ馬疫が挙げられる。主に北アフリカ、地中海諸国、アラビア半島などが発生地域だが、昨年2月にはタイでの発生が報告されており、中国の海関総署(税関)も国内流入に関する注意喚起を行っている。
また、汚染されたエサから感染する「馬パラチフス」という病気が存在するが、北朝鮮で度々発生している、人間のかかるパラチフスとは別のものだ。
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いかなる理由があろうとも、馬を死なせたことでパトロールに支障をきたしたことは事実で、これに対する何らかの処罰が避けられないだろうと、情報筋は見ている。既に、国境警備隊の中隊長、政治指導員、保衛指導員が今回の件に関して取り調べと厳しい問責を受けている。
現地では、過誤除隊(不名誉除隊)の処分が下されるのではないかと噂されており、中隊は不安に満ちていると情報筋は伝えた。