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米国のバイデン大統領は先月の米韓首脳会談で、米国から韓国軍に55万人分の新型コロナウイルスワクチンを提供すると表明した。それ以降、北朝鮮当局はワクチンの大量確保に乗り出したもようだ。製造国は問わず、効果が証明されたものならば、確保した上で朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に優先的に接種させる計画だという。

デイリーNKの北朝鮮国内の情報筋によると、海外に派遣されている幹部クラスの貿易駐在員に対して先月末、中国製でも構わないから、早急に集められるだけのワクチンを集めて輸入せよとの指示が下された。

北朝鮮は、ワクチン供給を準備している国際枠組みの「COVAXファシリティ」を通じてワクチンを取り寄せる計画で、ロシア製、中国製のワクチンに対しては「今のところ、これらのワクチンに対して(当局の)信頼が高くない」(別の情報筋)とされていた。また、国内では中国製医薬品による医療事故も発生しており、そうした医薬品に対する使用禁止、廃棄命令も出されていた。

(参考記事:「人体実験」で8人死亡…北朝鮮の製薬業の恐るべき実態

しかし、敵対する韓国軍にワクチンが供給されることとなり、それに心理的脅威を感じた北朝鮮軍当局が、急いでワクチンを取り寄せることになったというのが、事の背景だ。

北朝鮮は国内での新型コロナウイルス感染者発生を一切認めておらず、朝鮮人民軍での新型コロナウイルス感染状況はわからない。ただ、復数の情報筋の証言を総合すると、これまでに軍関係者の延べ20〜25%が隔離対象となった。そのため兵力不足となり、1日3交代体制から2交代体制への転換を余儀なくされていると言われている。

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また、民間人の「疑い患者」も全国的に1万人以上が隔離されていると伝えられている。

(参考記事:コロナ感染「疑い患者」1万人以上か…北朝鮮で4月以降

北朝鮮は、独自の貿易ネットワークをフル稼働させる一方で、上述のCOVAXファシリティを通じて輸入したワクチンを、優先的に軍関係者に摂取する計画を立てているとのことだ。優先接種の理由には、兵士たちは集団生活を行っているだけあり、民間人よりクラスター発生のリスクが高いこともある。

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北朝鮮は、国内でのワクチン供給状況についてモニタリングを行うとする世界保健機関(WHO)の要求に対して難色を示しているが、これも軍の優先接種計画が関係していると思われる。ただ、WHOの要求を受け入れなかったことで、摩擦が生じていると、別の北朝鮮国内の高位情報筋が証言している。

「軍のみならず民間人の間でも感染の疑われる患者が続出し、死亡者も増加して、コロナのせいで国内の雰囲気がよくない。お上(当局)が積極的な措置をしているので、ワクチンの導入時期が早まるのではないか」(情報筋)

物量確保、輸入に成功したとしても、今度はロジスティクス、実際の接種という難題が待ち構えている。北朝鮮は道路事情が劣悪で、電力供給も貧弱だ。ファイザー社製のワクチンを保存するためにマイナス75度を保つディープ・フリーザーの稼働は、一部地域を除いては困難だろう。EUは最長1ヶ月の冷蔵保存を承認したものの、その冷蔵庫の稼働ですら心もとないのが、北朝鮮の実情だ。

(参考記事:北朝鮮・羅先でメガソーラー計画始動も「メガ」にならない恐れ