たった1編成の貨物列車の行き先が、世界の注目を集めている。
北朝鮮に接する中国・丹東駅に停車している貨物列車。【丹東ー西浦】と書かれたサボ(行き先表示板)が掲げられ、昨年1月からのコロナ鎖国で止まっている中国と北朝鮮の貿易の再開の象徴のように注目されていた。ところが、5月24日の時点で、まだ運行を再開する兆しはないと伝えられている。
(参考記事:運行再開が遅れる北朝鮮行きの国際列車…本格的な貿易再開はまだ先か)その貨物列車に積載されていた貨物が忽然と消えた様子が、丹東駅に設置された監視カメラに捉えられた。5月14日に撮影された動画には、荷物が積載された無蓋貨物車にブルーシートがかけられている様子が収められているが、25日の動画からはその荷物が消えている。
丹東駅に1年以上停まっていた北朝鮮の列車の積荷が消える出来事は以前も起きていた、と伝えた現地のデイリーNK情報筋は、列車は中国から出国したことはないが、荷物は続けざまに北朝鮮に入っていると述べた。つまり、北朝鮮向けの荷物の一時的な保管場所として、この列車が利用されているということだ。もちろん、中国当局の黙認があることは言うまでもない。
北朝鮮は、新型コロナウイルスの国内流入に神経を尖らせ、輸入品の1次検査を中国で行うようにしているが、その後も一定期間隔離状態に置いてから、輸入しているものと思われる
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面列車に積まれていたのは、車のタイヤや部品、建設やインテリアの資材、金正恩総書記一家が利用する特閣(別荘)で使う消耗品、贅沢品など、北朝鮮当局が注文した「国家密貿易」の品物だ。
北朝鮮には、国の許可を得て通関手続きを経ずに持ち込まれる公式の密輸と、国の許可を得ずに行われる非公式の密輸が存在する。公式の密輸とは理解し難い概念だが、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁で、輸入が禁止された品目があるために生じたものだ。それだけに、北朝鮮当局は貨物列車の警備に神経を尖らせている。
(参考記事:北朝鮮の「公式密輸」が一部再開で輸入品価格が下落傾向)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面貨物列車に積載されていた荷物は、駅でトラックに積み替えられ、遠く離れた山東省の龍口港に運ばれ、他の倉庫に保管されていた密輸品と合わせて船に積んで、北朝鮮・平壌郊外の南浦(ナムポ)港から輸入するという、非常に遠回りで手間のかかるルートを利用している。
貨物列車を利用する場合は、人の目に触れないように深夜早朝の時間帯に運行されているが、それでも情報を完全にシャットダウンすることは難しいため、ごく一部を除いては主に船を使っているものと思われる。
「列車を動かすと、多くの人々が国(北朝鮮)が密輸を手動していることを知ってしまう。それが(北朝鮮が)列車運行を再開できない理由の一つ」(情報筋)
(参考記事:北朝鮮行きの国際貨物列車、1年2カ月ぶりに運行再開か)