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北朝鮮に数千人いると言われる華僑。彼らは長らく、北朝鮮と中国との間で翻弄され続けてきた。1927年と1931年の華僑排斥暴動、朝鮮戦争、平壌、江界(カンゲ)、新義州(シニジュ)、清津(チョンジン)にあった中国人学校の閉鎖、配給対象からの除外などなど。スパイとして処刑されたり、全財産を奪われたりした者もいた。

また、北朝鮮は中国との関係を「血で固めた友誼」と持ち上げる一方で、国連の対北朝鮮制裁に同調した際には「中国は千年の宿敵」とこき下ろすなど、状況次第で立場をころころ変えてきた。そして、コロナ鎖国で食糧危機に陥った今は、「中国推し」の局面となっているようだ。

(参考記事:「二枚舌で腹黒」北朝鮮で再び高まる反中感情

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の新義州の情報筋によると、朝鮮労働党平安北道委員会の指示に基づき、市内の人民班(町内会)で会議が開かれた。主要案件は「中国に対する非難と誹謗を徹底禁止することについて」というものだ。

北朝鮮国民の間には、相対的に自由に出入国できる立場を利用して行商を営み、裕福な暮らしをしてきた在北朝鮮華僑に対する反感が少なからず存在し、トラブルが起きれば、「トンテノム」という差別用語を使って口汚く罵ることもある。

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また、中国政府に対しても「社会主義の兄弟国を自称しつつ、わが国(北朝鮮)が経済的に苦境に立たされているのに、経済支援を小出しにする」(情報筋)と、反感を持つ者が少なくない。

かつては「中国を信じすぎるな」と宣伝してきた当局だが、今は中国批判、華僑差別を厳しく禁じ、差別用語を使って罵った場合には思想批判の場で吊し上げると言い出したのだ。

新型コロナウイルス対策で停止していた貿易が再開される動きが顕著になるのに従い、国民の間には「まもなく中国から支援物資が大々的に入ってくる、習近平国家主席の直々の指示で可能になった」との話が広がっているとして、情報筋は中国批判禁止の背景を次のように説明した。

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「中央がわが国の食糧、建設、営農資材など何一つ自主的に調達する方法がないものだから、中国からの支援が不可避となり、中国と中国人に対する非難を禁止した」

北朝鮮国内の反中感情が中国に知れて機嫌を損ねられでもしたら、支援を受けられなくなるのではないかという懸念が、今回の命令に反映されている。中国が、北朝鮮の二枚舌に気づいていないはずはないのだが。

(参考記事:北朝鮮行きの国際貨物列車、1年2カ月ぶりに運行再開か

新義州に隣接する龍川(リョンチョン)の情報筋も、地元当局が、華僑に対する批判を絶対にするな、上述の差別用語を挙げて、絶対に使うなとの警告を下したと伝えた。

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当局が、差別、ヘイトスピーチ禁止指示を出すのは今回が初めてで、一部では、「最高尊厳(金正恩総書記)が習近平国家主席と義兄弟の契りを交わした」という根も葉もない噂まで流れているとも伝えた。

さらには、中国を「毒親」にたとえて、毒親を持った子どもが苦労を強いられるのと同様に、わが国の人民は中国に頼って、ご機嫌をうかがうしかないと、自嘲気味な話も聞こえるとのことだ。

ただ、現地在住の華僑はコロナ鎖国で生活苦に見舞われ、「わが国民より苦しい暮らしを強いられてきた」と情報筋は気遣いを見せた上で、貿易再開と共に少しずつ活気を取り戻しつつあると伝えた。

(参考記事:華僑40人 、コロナ封鎖の北朝鮮から「覚悟の脱出」