華僑40人 、コロナ封鎖の北朝鮮から「覚悟の脱出」

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今月22日午後。北朝鮮と中国を結ぶ鴨緑江大橋(中朝友誼橋)を渡る1台のバスが目撃された。車体には朝鮮語で「妙香山(ミョヒャンサン)観光」の文字。

税関や橋周辺は通行止めとなり、橋から100メートルほど離れた税関の建物の中には、防疫当局の関係者が大勢待機するなど、周囲は物々しい雰囲気に包まれた。

北朝鮮当局は今年1月から、新型コロナウイルス対策として国境を封鎖した。ごく一部の物資搬入用のトラックを除いては車両や列車の通行はなかったが、一体どういうことなのだろうか。

中国のデイリーNK情報筋によると、乗客は平壌に住んでいた在北朝鮮華僑40人。

在北朝鮮華僑は、北朝鮮国民と比べて出入国がしやすいという点を活かし、貿易や担ぎ屋などの商売で生計を立ててきた。しかし、国境閉鎖に伴い仕事がまったくできなくなった。だからといって、密輸などの違法行為に手を出せば「首」が飛びかねない。1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のときもそうであったように、北朝鮮当局はコロナ禍の中で社会の秩序を恐怖で維持しようと、犯罪行為に対して極刑を乱発している。

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平壌の一般市民はもちろん、政府高官に対する配給ですら滞るような状況で、生活苦に耐えかねた華僑は、北朝鮮からの出国の道を選んだ。

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もちろん、簡単に脱出できるわけではない。

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「出国申請をして、北朝鮮から抜け出すのにワイロなどを含めて、少なくとも1人あたり1万元(約15万9000円)は払ったはず」(情報筋)

情報筋は、北朝鮮の担当者が華僑を足元を見て、あれこれいちゃもんをつけたり、早く許可が欲しいならワイロをもっと出せなどと要求したりしただろうと見ている。さらに、これまた違法行為には違いなく、治安悪化などで神経を尖らせている当局に露見すれば、どんな目に遭わされるかわからない。

ようやく北朝鮮から脱出した人々は、新型コロナウイルスの検査を受けた後、中国政府が指定する施設に移動し、隔離状態に置かれているとのことだ。当局は、彼らの検査結果に注目しているようだ。

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北朝鮮当局は今に至るまで、自国内でのコロナ感染者の発生を認めていないが、40人の中に感染者がいたとしたら、北朝鮮でもコロナ感染が広がっていることを示す。ただ、中国当局が検査結果を明らかにするかはわからない。

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なお、遼寧省衛生健康委員会は24日午前、23日の15時から24時までの間に、省内で6人の新規感染が確認されたと明らかにし、4人は大連(3人)、瀋陽(1人)での市中感染だが、残りの2人については発表文に記載がない。

北朝鮮が建国した1948年には5万人の華僑がいたが、その後の中朝関係の悪化、弾圧策などで徐々に減り、1980年代には2万人まで減っていた。香港の週刊誌「亜洲週刊(2015年9月27日号)」は、丹東市政府関係者の話として、北朝鮮に居住する華僑の数は5400人。それから5年経って、さらに減っているものと思われるが、統計は明らかにされていない。

(参考記事:北朝鮮、自国在住の華僑に「嫌がらせ」か…中国との関係悪化で