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自動車の個人所有が許されていない北朝鮮だが、工場や企業所、機関の名義を借りて登録する形で所有する「抜け道」が長らく存在していた。しかし、当局は昨年から、このような車両が増えたことを「社会主義にそぐわない現象」として問題視し、取り締まりを始めた。

(参考記事:北朝鮮が自動車の「個人所有」に対する摘発を強化

北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)では、当局が個人所有の車両の没収に乗り出したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

現地の情報筋によると、非社会主義グルパ(取り締まり班)が、違法な個人の商行為を規制するとして、中国キャリアの携帯電話に加え、個人所有の車両、オートバイに対する集中的な取り締まりを始め、すでに20人を逮捕している。

彼らの主なターゲットは、個人所有の車両で運送業を営む人々だ。料金を受け取り人や物を運ぶものだが、登録が不確かな車両が多く混じっているというのがその理由で、摘発されれば、車両は没収される。

このような取り締まりが、経済に深刻な影響を及ぼし始めていると情報筋は指摘する。商人から委託された荷物や、商売で遠隔地に行く人を乗せる車両が摘発されたことで、物流が滞り、商人も消費者も品物が買えなくなってしまったのだ。

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北朝鮮で最も一般的な交通手段は鉄道だったが、高い電化率がアダとなり、電力難によりまともな運行ができなくなった。それを補完する形で発達したのが、個人の運送業者だ。列車運行は一部で改善が見られるが、個人車両に頼る部分も大きい。

こうした規制で物流が滞るのは、充分に予想可能な結果だ。餓死者が発生するほどのモノ不足に苦しんでいる国民を、さらなる土壇場に追い込むことになっても取り締まりを続けるのだろうか。

(参考記事:出産中の妊婦が「孤独死」する北朝鮮の医療崩壊

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ちなみに、RFAの平安南道(ピョンアンナムド)と黄海北道(ファンヘブクト)の情報筋は、先月27日から、コロナ蔓延防止を理由にして列車の運行が中止されたと伝えている。人流、物流がさらに滞ることは避けられないだろう。

情報筋は、今回の取り締まりの意図について「個人の商業活動を根絶させる意図が背景にある」と説明する。

金正日総書記は市場に対する統制を試み、経済を大混乱に陥れた。金正恩総書記はそこから教訓を得たのか、市場に手を出そうとしなかった。しかし、ここ数年で徐々に統制を強め、今年に入ってからはトンジュ(金主、新興富裕層)や地方の党組織、軍などが営んでいる企業に対する締め付けを強化し、内閣に帰属させる動きを進めている。今回の取り締まりも、そのような一連の流れで始まったものと考えられる。

(参考記事:北朝鮮、党や軍所属の事業体を内閣に移管する事業に着手

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別の情報筋は、グルパが庶民が移動や商売に使っていたオートバイまで没収していると伝えた。それらのほとんどが、コロナ前に密輸で中国から持ち込まれ、企業所、機関の名義を借りて登録されている違法なものであるため、正規に輸入、登録されたことを示す書類を示さない限りは、没収の対象となるとのことだ。

情報筋の説明によると、市場経済化の進展に伴って物流量が増え、正式に登録されたオートバイだけでは追いつかなくなったことから、当局は2013年から期限付きで、オートバイを企業所、機関の名義で臨時に登録して使える措置を取った。しかし、割り当てられたナンバーのほとんどを幹部が独り占めにしてしまい、個人はニセのナンバーを付けたオートバイに乗るしかない状況となった。

今回の取り締まりについてこの情報筋は、経済難の中で、個人所有の車両によるガソリン使用を浪費と見て取り締まることで、個人運送業を統制し、市場経済化から派生する非社会主義的な要素をコントロールすることが目的だと説明した。

(参考記事:北朝鮮がオートバイの個人所有を規制か