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 ※この記事には、自殺に関する具体的な記述が含まれています。

北朝鮮北部の貿易都市、恵山(ヘサン)で今年8月、「ハモニカ社宅」と呼ばれる長屋で火災が発生、保管されていたガソリンに火がついてプロパンガスにも引火、爆発する大火災となった。

この火災で9人が亡くなり、30人が負傷する大惨事となった。火災現場には消防車が出動しないなど、市当局の対応が遅れたことが市民の怒りを買い、朝鮮労働党の恵山市委員会の委員長、人民委員長(市長)、安全部長(警察署長)が住民への謝罪を余儀なくされる異例の事態となった。

(参考記事:北朝鮮のガス爆発事件、対応の遅れで地方トップが異例の謝罪

結局、恵山市安全部(警察署)の消防課長と消防隊長が解任、撤職(更迭)される処分を受け、火元の家に住んでいた国境警備隊の哨所長は、生活除隊(不名誉除隊)と、労働鍛錬刑(懲役刑)1年の処分を受けた。しかし、悲劇はここで終わらなかった。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、今月1日に、火元となった哨所長の妻のチョさんが、居候していた市内北東部の渭淵洞(ウィヨンドン)の民家で、自ら命を絶った。

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失火の責任を問われた夫は収監され、新型コロナウイルス対策としての国境封鎖で密輸ができなくなり、チョさんは生活苦にさいなまれていた。

チョさんは、黄海道(ファンヘド)の実家に帰ることにして、安全部(警察署)に旅行証(国内用パスポート)を申請したが、コロナ感染拡大防止策として移動制限が強化されている中、発行を拒否されてしまった。

安全部はそればかりか、妻を「犯罪者家族」呼ばわりし、「国家的な日(朝鮮労働党創立日)なのに、証明書を出せというが、火災で国際的な恥をかかせたくせして、何の証明書か」とすごんだ。

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娘の苦境を知った実家の母が、娘を訪ねようとしたが旅行証が出ず、リュックサックにコメ15キロを詰めて送ったが、対人恐怖症から抑うつ症状を見せていたチョさんは、コメを受け取る前に命を絶ってしまった。

(参考記事:北朝鮮が自ら命を絶った人を「裏切り者」呼ばわりする理由とは?

安全部と医師による検死で、チョさんが妊娠中だったことを判明、その話が市内に広がり、大きな衝撃が広がった。また、遺書も残されていたが、安全部が持ち去り、内容はわかっていない。

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北朝鮮では通常、亡くなって3日間は喪に服してから遺体を埋葬するが、チョさんが亡くなった翌日(2日)から、恵山市に封鎖令が下され、一切の外出が禁止されてしまった。国境警備隊の責任保衛指導員(秘密警察)と兵士の2人が、武装したままで川を渡り、脱北する事件が起きたことによるものだ。

(参考記事:北朝鮮で特殊部隊と国境警備隊の衝突続く…「発砲」寸前の事態に

20日間外出が禁止され、埋葬のために外出許可を得るのに5日もかかってしまった。また、棺を担ぐ人数も6人に制限された。

市民の間ではこんな噂が広がっている。

「封鎖のせいで身動きが取れなくなり死んだのではないか」
「軍隊は肩で風を切って歩き、戦時状態が宣言されたような状態で、人まで死ぬなんてゾッとする」

また、市当局に対する批判の声も上がっている。

「今回のことで塔城洞のハーモニカ社宅火災の話が蒸し返された。幹部は謝罪までして越冬準備の前に住宅を建設してくれると言っていたのに、(何もしてくれないとは)どういうことなのか」

前述の通り、朝鮮労働党の恵山市委員長らは、火災鎮火が遅れたことについて住民に謝罪し、キムジャン(越冬用のキムチ漬け込み)の時期までには復興住宅を完成させると約束したが、台風被害の復旧に人員を割かれ、建設が遅れている。

不満の声はとどまることを知らない。

「元帥様(金正恩党委員長)の方針貫徹でのために被災地に人を動員して、自分の地域の被災地は気にもとめない」
「地元民が飢えていることには関心を持たないのか」
「同じ人民なのに、上中下の差別があるのか。両江道人民と咸鏡道人民を差別するのか」

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