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軍関係者にだけ適用される韓国の軍刑法62条は、職権を乱用して虐待または過酷な行為を行った者は5年以下の懲役に処すと定めている。1962年に軍刑法が成立当初から存在するこの条項だが、民間人を含めた韓国国民全体の人権が侵害されていた軍事独裁政権下では、さほど意味のないものだった。

民主化されて30年以上が経ち、軍における人権状況は大きく改善されたとは言われるが、2014年には、長期間のいじめ、セクシャル・ハラスメントに耐えかねた兵士の自殺や銃乱射事件が相次ぎ、カウンセラーの配置、相談電話の開設などが行われた。

軍事境界線を挟んで韓国軍と対峙する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)では、韓国軍とは比べ物にならないほどの人権侵害が横行しており、それに対する報復も絶えない。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、ある兵士が起こした殺人事件について伝えた。

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事件が起きたのは今月1日のこと。恵山(ヘサン)市の雲寵里(ウンチョンリ)の住宅に、チェという兵士が押し入った。そこは、上官のハン小隊長の自宅だった。小隊長本人は部隊にいて不在だったが、家には彼の妻と両親がおり、チェは銃撃を加えた。

銃声に驚いた住民が集まってきたが、チェは「道を塞げば引き金を引く」と脅しつつ、逃走を図り、部隊の兵士たちが家に到着したときには既に行方をくらました後だった。

銃撃を受けた両親は死亡、妻は負傷したが一命はとりとめた。チェは、翌朝8時ごろに逮捕され、現在は部隊の保衛局(秘密警察)で取り調べを受けている。

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チェは小隊長から頻繁にパシリを強いられ、現金、酒、タバコといったワイロの要求に苦しめられ続けてきた。そればかりか、ワイロの額が少ないと肉体的、精神的に暴力を振るわれてきた。その報復として、小隊長の家族を殺傷したものと思われる。小隊長の不正行為に対する処分の有無について、情報筋は言及していない。

情報筋は、経済難のせいで今年に入ってから殺人が増えていて、この状態が続くなら今後も同様の事件が起きるだろうと述べた。

軍における暴力、いじめ、ワイロの要求が報復殺人につながる事例は少なくない。

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昨年10月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の鐘城(チョンソン)で、国境警備にあたっていた特殊部隊の暴風軍団の兵士が、いじめの常習犯だった副分隊長を自動小銃で射殺し逃走する事件が起きている。

(参考記事:「特殊部隊のいじめ殺人」発生で北朝鮮が厳戒態勢

また、脱北につながる事例も後を絶たない。

昨年12月には、同じ両江道の金正淑(キムジョンスク)郡の第7軍団の分隊長が、夜間勤務中に武装したまま、中国に逃げ込んだ。また、郡内の上台里(サンデリ)でも別の兵士が武装したまま国境の川を越えて脱北する事件が起きている。いずれも、上官からのワイロの度重なる要求に耐えかねてのことだ。

(参考記事:軍人、警察官の脱北続発…コロナ禍で混乱の北朝鮮国境