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北朝鮮は年明け早々、朝鮮労働党第8回大会を開催した。年初の開催は史上初のことで、8日の開催期間は5年前の第7回大会に続き、2番目の長さだった。

コロナ禍の中で開かれた大会では、国防力強化を主な成果として示し、核兵器開発を続ける意志を改めて示した。また、新たな経済発展5カ年計画も提示された。

党大会での決定事項について、北朝鮮国民の反応は芳しいとは言えないが、幹部の反応はいかなるものか。

(参考記事:「国家の大嘘に爆発寸前」北朝鮮国民、党大会に大きな不満

デイリーNKは、党大会後に北朝鮮国内の情報筋を通じて首都・平壌の幹部A氏、そして平安北道(ピョンアンブクト)の幹部B氏と接触し、インタビューを行った。両者は、国防力強化や人事については概ね一致した見解を示したが、その他の事項、特に民生経済については異なる見方を示した。コロナ対策の国境閉鎖、貿易停止によって経済と暮らしが疲弊しきっている地方の幹部と、相対的にダメージの軽い平壌の幹部の見方の差が鮮明に現れた形だ。

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ー今回の党大会での最大決定事項は、金正恩氏の総書記への推戴だが、書記局体制への回帰と見るべきか

平壌市A幹部:偉大なる首領様(金日成主席)と将軍様(金正日総書記)時代の最も懸命なる党の指導方針を受け入れたものだと評価している。

平安北道B幹部:肩書は重要ではない。5年経ったらまた委員長の肩書を使うことになるか、それよりさらに神々しい肩書を使うことになるかはわからない。

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ー5年前の経済発展5カ年計画は達成できなかったが、今回の党大会で提示された国家経済発展5カ年計画についてどう見る?

A:今回違うのは、上から下まで幹部事業(人事)が経験や実力を重視して行われた点だ。具体的内容や方向、方法は5カ年戦略とほぼ一致するが、今回は細分化、深化させた。

中でも日・月・四半期・半年単位で経済執行総和(総括)を行うとのことで、イルクン(幹部)たちは、今までのように党庁舎の中で適当に時間つぶしをして、虚偽の報告をすれば大怪我することになると緊張している。幹部の肩書を失うか、英雄になるか、今回はそのどちらかで、中間はないだろうという恐怖感がある。

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B:これまで上手くいかなかったからと、再び幹部事業を行って、検閲組(監査チーム)を派遣して、処罰して革命化(下放処分)したからと改善するわけではないと思う。政策を遂行できなかったイルクンたちを批判の壇上に立たせさえすれば、5カ年計画の課題が達成できるというものではない。

地方の生産基地の設備は老朽化し、まともに勉強して大学を出た人材もほとんどいない。さらに地方では大衆を動かすのが難しい。皆一様に密輸に手を出し、自分の力で商売して生き抜き、(政治的)行事はカネを払ってサボる。このような組織生活を忌避する現象は、数十年に渡り黙認されてきた、資本主義化した体系で、社会主義の政策や思想を執行せよと言われてもうまくいくのか。これではまた「トルメギ(ハタハタ)になる」(うまく行っていたことがダメになる)だけに思える。

ー5カ年計画の基本は、自力更生と自給自足だが、国際社会の制裁、コロナなどの悪条件の中で現実的に可能なのか?

A:われわれは以前からそのような環境で暮らしてきた。今もこれからも、やれないということはないだろう。

B:去年は多くの人が(コロナにかかっても)薬も使えず、飢えて死んでいくだろうと思っていたところに、再び自力更生、自給自足などのスローガンが持ち出されたのを見ると、(経済再生のための)新たな方策はなく、「自分の力で生き抜け」という言葉にしか聞こえない。

ー地方の人民生活が立ち遅れていることを認め、地域の特性に合わせた支援を示唆して、セメント1万トンなどと言った具体的な目標も示した。

A:地方と首都は雲泥の差だと異口同音で言っている。助けるのは当然だろう。地方には藁葺き屋根の家もあるというが、平壌のようにマンションでの立派な暮らしはできないとしても、暖かいオンドルのある平屋建ての家で暮らせるように、党が支援してほしい。

B:地方の幹部の立場からすると、最も刮目すべき政策だ。地方のイルクンの失政で人民生活が立ち遅れていると毎日のように総和して処罰しているではないか。しかし、国が地方に何か支援してくれるのなら、少ない資材であっても工夫して、われわれも生き残る道を考えることができる。

ー国防力強化が主な成果として言及され、核兵器の開発継続の意志も示されたが、必要だと思うか?

A:必要だと思う。敵どもがわが共和国(北朝鮮)の核兵器のせいで手が出せずにいるという、党が主張する成果の根拠として必要だ。

B:たしかに国の国防力強化は必須ではある。しかし、劇的にやるよりも民需もバランス良く発展させる方向を取ってくれたらと思う。

ー韓国政府の態度次第で南北関係が変わると言っていたが、関係改善は必要だと思うか?だとしたらその理由は?

A:南朝鮮(韓国)の文在寅大統領が、メーデースタジアムで演説し、板門店で(金正恩氏と)会ったとき、祖国統一まではできなくとも、われわれは一つの民族なのだから助け合いながら生きていけると思い、涙を流した。しかし、南朝鮮が約束を平気で破るのに、われわれの方から平和を乞うことなどできないではないか。われわれは南朝鮮当局者が数多くの約束破りをして、わが共和国の権威を毀損する行為をしているから、北南関係が悪化していると教養(教育)を受けている。またそういった認識に立って(人民を)教養している。ただし、関係改善は必要だと思う。同じ民族、単一民族ではないか。

B:お互いプライドを捨てて腹を割って話し合い、協力も支援も受けたい。同じ民族同士なのに、こちらから薬がない、コメがないと正直に伝えるのがそれほど難しいことなのか。南朝鮮とは経済協力すればお互い発展できて良いのではないかと思うが、党は対南対敵観念を立てて、敵に対する幻想は禁物だと教養している。われわれに、決定に関わる余地はないと思う。しかし、北と南の人々は同じ言葉を使っているではないか。地方には、南朝鮮からの投資、開発に適したところが、1ヶ所、2ヶ所どころではない。

ー米朝関係についてどう思うか?バイデン政権ができたが、今後改善する可能性はあると思うか?

A:米国がいかなる形で交渉を提案してくるかによると思う。党の政策は、第8回党大会で宣言した通りなので、変化はないだろう。われわれに友好的な国と、非友好的な国を同じように相手にするわけにはいかないではないか。

B:国防力をさらに強化する道が自主の道というが、この道を捨てずにこだわるだろう。それで党大会でも米国の目を気にせずに言いたいことをすべて言ったのではないか。

ー今回の党大会では「人民大衆第一主義」「以民為天(民を以て天と為す)」「人民のために働く党」など、人民を最優先するという理念を宣言した。

A:わが党は一時たりとも以民為天のスローガンをないがしろにしたことはない。それにもかかわらず、改めて掲げたのを見て、党大会をきっかけに党と人民大衆の一心団結の礎をしっかりさせる一方で、最も苦しかった1年で傷つき、疲弊した人民たちの心と暮らしの隅々まで汲み取ろうとするものだと思った。人民大衆の党として当然のことだと思う。

B:上部ではイルクンが党の政策を遂行できず、国がむちゃくちゃになったと我々を罰し、革命化して幹部事業(首の挿げ替え)をやる。人民も、幹部が政策の執行をまともにできず地方の産業や人民の生活が立ち遅れ、ワイロを受け取っていると責める。根本的に改善するためには、以民為天を具現する、ずば抜けて確実な党の政策が必要だ。

ー党に規律調査部が新設され、党中央検査委員会による不正行為の監督、信訴(不正行為の訴え、内部告発)処理機能を強化した。これについてどう思うか。また、周りの反応は?

A:平壌医学大学事件で、平壌市と中央党(朝鮮労働党中央委員会)に暗雲が立ち込めた。社会主義社会において、幹部たちの不正行為がこれ以上看過されてはならない。党は、死活問題、必須の問題として、規律を強化したのだと思う。幹部とその家族、関連する単位(機関)の責任者まで覚醒させる対策だというのが周りの反応だ。

(参考記事:北朝鮮社会が震撼「医大の性奴隷」事件で死屍累々

B:新たに部署を作っても、そのポストに誰をつけても、地方は何も変わらない。この件について地方では特に話題にもなっていない。

ー今回の党大会で、今まで金正恩氏に頻繁に随行していた趙甬元(チョ・ヨンウォン)氏が超スピード出世したが、何か言われていることはないか?

A:趙甬元同志は(金正恩氏の妹の)金与正(キム・ヨジョン)同志の代わりに意思決定させるためにポストにつかせた責任幹部と言われている。

B:地方では、趙甬元同志が李炳哲(リ・ビョンチョル)同志より先にポストについたことに、軍需工業のイルクンたちの間でいろいろ憶測が飛び交っている。核やロケット(ミサイル)分野も党が全面的に指揮、監督、統制するという意味だ、党の権威強化だ、などと言われている。

ーその一方で金与正氏が政治局委員候補から外れたが?

A:今回は古い世代の革命家の幹部事業に重点を置いたためではないかと思う。金与正同志は将軍様(金正日総書記)のご令嬢なので、首領様(金日成主席)のご令嬢の金慶喜(キム・ギョンヒ)部長同志と同じと考えればいいだろう。金与正同志は将軍様のご令嬢ということだけで、これ以上の議論は必要ないと幹部たちは言っている。

B:金与正同志は職責、肩書とは関係なく、元帥様の最もそばで補佐し、相談相手になることのできる一番の革命同志で戦士であるという特殊な地位にあると見ている。職責、肩書など何の関係があろうか。

(参考記事:「生意気な青二才」「お前が言うな」批判も浴びた金与正氏…降格の背景は