人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

韓国統一省の統計によると、韓国に入国した脱北者の数は現在3万2000人あまり。一時に比べて減少傾向にあるとはいえ、毎年1000人前後が韓国にやって来る。そんな脱北者を対象とした大々的な調査が行われた。

6割以上が北朝鮮に送金

韓国のNGO、北韓人権情報センターは7日、在韓米国大使館の後援で、「2018年北韓離脱住民(脱北者)経済社会統合の実態」と題したセミナーを開催した。その場で、脱北者を対象にした調査の結果が発表された。

調査は、韓国に住む脱北者414人(女性311人、男性103人)を対象に、昨年12月19日から今年1月2日の間に行われたものだ。

まず、「北朝鮮に送金したことがあるか」という問いに61.8%が「ある」と答え、そのうち「2018年に送金した」と答えた人は49%に達した。

同センターが2014年12月に脱北者400人を対象に行なった調査では、59%が「北朝鮮に送金したことがある」と答えている。また、脱北者団体のNK知識人連帯の調査でも、51.7%が「送金したことがある」と答えている。

(参考記事:韓国の脱北者「59%が北朝鮮に送金」 北朝鮮から韓国へ送金するケースも

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

2018年に送金したと答えた125人の1回の平均送金額は278万ウォン(約27万2000円)で、その合計は3億2890万ウォン(3215万円)だった。つまり、脱北者全体では数十億円にのぼる額を送金している可能性もあるということだ。ちなみに1人あたりの最高額は2000万ウォン(約195万円)、最低は30万ウォン(約2万9000円)だった。

「携帯電話で受け取ったか確認」

送金目的としては「北朝鮮に残してきた家族の生活費支援」が86%で最も多く、次いで教育費の支援、商売の資金などの順だった。受け取り相手は「きょうだい」が38%、「両親」が32%、「子ども」が12%、「その他親戚」が11%だった。

送金した資金をどこで得たかを問う質問には「仕事で得た給料」(63.9%)、「韓国政府からの定着金、支援金」(21.6%)、「銀行の融資」と「知人からの借金」(5.2%)の順だった。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

一方、送金をしなかった人にその理由を尋ねたところ、「送金するカネがない」(39.7%)、「北朝鮮に家族がいない」(21.8%)の順だった。

送金手数料は送金額の3割が平均だが、伝達方法や地域によって多少差がある。一方、北朝鮮にいる家族から送金を受け取ったという人も8人いた。

(参考記事:「北朝鮮にいる親からの仕送りで韓国留学」増加する留学型脱北

送金後にほとんどの人が受け取れたかを確認しており、手段としては「受取人に電話する」が88%、「伝達者(送金ブローカーなど)に電話する」が5.7%、「手紙」が1.3%だった。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

回答者の46.9%が北朝鮮にいる家族と連絡を取り続けている。手段としては93.5%が電話を選び、人づて(1%)、手紙(0.5%)などの回答もあった。連絡回数は「年1〜2回」(61%)、「3〜5回」(17%)、「20回以上」(6%)だった。

目立つ女性脱北者の貧困

同センターは、脱北者の経済状況についても詳しく調査している。

経済活動の参加率は首都圏(61.3%)、地方(62.8%)で地方偏差はなかったが、男性は77.7%、女性は56.7%でジェンダー偏差が目立った。

職業は「単純労働」が25.8%で最も多く、以下「サービス業」(21.3%)、「販売」(14.3%)、「専門職」(10.7%)、「事務」(9.0%)の順だった。平均所得は約194万ウォン、労働者の平均賃金は約186万ウォンで、韓国国民平均の約3分の2に留まっている。

(参考記事:2割が「北朝鮮に帰りたい」…韓国の脱北者3万人、多くが困窮

経済活動をしない理由として男性は「通学」(52.5%)、「肉体的困難」(30.4%)を挙げたが、女性は「肉体的困難」(41.5%)、「育児」(25.2%)、「通学」(17%)を挙げた。女性の脱北者が経済的な困難に加え、フィジカル、メンタル面での問題を抱えていることは、「病気を抱えている」(43.5%)、「憂うつ感、絶望感を感じる」(25.6%)という数字にも現れている。

住居形態について問う質問に「持ち家」と答えた人は9.4%に過ぎなかった。ただ、これは韓国にやってきたばかりの脱北者が、政府から提供される賃貸マンションに住むことと関係している。

外部情報に接触

北朝鮮にいたときに外部からの情報に接した経験を問う質問に「ある」と答えた人は62.3%。「テレビ、映画、ゲーム」が80.2%で圧倒的に多く、「歌」が38.3%、「ニュース」は12.8%だった。

外部からの情報に接して受けた影響を問う質問には「韓国に好感をもった」との回答が47.2%、「脱北したいという気持ちが高まった」が38.6%、「新しい情報を知った」が29.9%、「北朝鮮の政権に反発を感じた」が18.9%となっている。