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旧ソ連では、すべての印刷機やコピー機は当局への登録が義務付けられ、KGBの監視を受けていたが、その目を盗んで、発禁となった書籍を印刷・流通させる行為が広く行われていた。旧ソ連国民は、このようなサミズダート(地下出版)を通じて、ノーベル文学賞作家ソルジェニーツィンの「イワン・デニーソヴィチの一日」、「収容所群島」、パステルナークの「ドクトル・ジバゴ」など、様々な禁書に触れることができた。

このような地下出版は、旧共産圏や全体主義国家で広く行われてきた。もちろん、北朝鮮でもだ。

保衛部(秘密警察)は工場、企業所、国家機関の所有する印刷機、コピー機を監視下に置いているが、密かに様々な出版物が印刷されている。

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そして最近、その拠点のひとつになっている写真館に対する大々的な取り締まりが行われた。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、道の保衛局が先月末から、清津(チョンジン)市内のすべての写真館に対する集中的な検査を行い、パソコン、印刷機などを没収したと伝えた。

北朝鮮では現在、大増産キャンペーンの「80日戦闘」が行われているが、保衛局はそのさなかに韓流などの外国映画、ドラマをUSBメモリなどに保存して流通、視聴する行為にとどまらず、当局の許可なしに教科書、党の書籍を印刷・流布する行為に対しても根絶やしにする目的をもって取り締まりを行っている。

なぜ教科書をコピーするのか。

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「最近、生徒たちが使う教科書や必修書籍が不足して、写真館で印刷しようとする人が増えて、保衛部に目をつけられていた」(情報筋)

北朝鮮は、幼稚園から大学に至るまで教育はすべて無償と豪語しているが、現実は全く異なる。学校からは設備修理費など様々な名目で金品を納めることを強いられ、教職員への付け届けも欠かせない。また、制服や教科書も不足しており、市場や写真館などで購入するしかない。

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保衛部は、写真館が教科書をコピー、販売するついでに、禁書となっている外国書籍もコピーして販売している実態を把握し、取り締まりに乗り出したというわけだ。

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水南(スナム)区域の写真館では、未登録の印刷機、パソコンをすべて違法なものと決めつけて、没収していったとのことだ。「没収したものはすべて国庫に納められるので、取り返そうとは思うな」との警告を残していったという。

保衛部はまた、教科書や合法的な書籍であっても、コピーすることは違法だとして、写真館のオーナーを連行し、取り調べている。情報筋は、彼らには罰金刑が下されるだろうと見ている。さらに保衛部は、区域の8.3管理委員会、便宜施設管理委員会から彼らを追い出させ、営業そのものを中止させる措置を取っている。

今回の措置は、今月4日の最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で採択された、「反動的思想・文化排撃法」に基づくものと情報筋は見ている。

(参考記事:「反動的思想と文化を排撃」北朝鮮、韓流を警戒か

こうした取り締まりに対する市民の反応について、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

新義州(シニジュ)の情報筋は、「すでに過去の取り締まりで大人、子ども問わず多くの人が逮捕され、教化所(刑務所)送りにされているが、この法でより多くの人が反動分子扱いされて死に追いやられるだろう」と、怒りをあらわにした。

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また別の住民によれば、新義州市民の間では、コロナ禍で人々の暮らしが悪化の一途をたどっているのに、人々を助ける政策ではなく、思想統制にうつつを抜かす金正恩党委員長は父親(金正日総書記)よりひどいと非難轟々だと伝えた。

「苦難の行軍で数百万の人が飢えて死んでいた1990年代後半から、当局は市民に食糧を配給することを考えるどころか、むしろ体制の脅威になり得る住民を統制する非社会主義グルパなど非常設機構を立ち上げるのに忙しく、罪のない人々を手当たりしだいに捕まえて、公開処刑する恐怖政治を行った」(住民)

しかし、いかに取り締まりを強化しようとも、北朝鮮の人々の情報と娯楽への渇望を押さえつけるのは極めて困難だろう。また、あらゆる権力、権限が現金を生み出す源泉となっている北朝鮮のことだ。ほとぼりが冷めれば、権力者は、韓流を見た庶民からワイロを巻き上げる根拠として、この法律を最大限に活用するだろう。

(参考記事:「公開処刑でも止められない」北朝鮮国民がハマる3つの禁忌

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