世界保健機関(WHO)の報告書によると、北朝鮮国内で隔離されている人の数は706人、累計では3万2843人で感染者はゼロだという。しかし、この数字は実態とは大きくかけ離れているようだ。
デイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部の高位情報筋によると、今年に入ってから11月末までの累計で、軍における隔離施設への収容者は陸軍4万3000人、海軍6200人、空軍5420人の計5万4620人に達した。
陸軍は17ヶ所、海軍は3ヶ所、空軍は4ヶ所の合計24ヶ所の隔離施設を運営している。また、民間人の隔離施設は全国で15ヶ所に達する。
陸軍は江原道(カンウォンド)、平安南道(ピョンアンナムド)などの各軍団司令部直属の病院の隣に隔離施設を建設、運営している。海軍は南浦(ナムポ)、黄海北道(ファンヘブクト)の勝湖(スンホ)、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)に、空軍は平安南道の价川(ケチョン)と温泉(オンチョン)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の鏡城(キョンソン)で隔離施設を運営している。
別の情報筋は、先月1日の時点で隔離施設への民間人の収容者が累計で8万1000人に達したと伝えた。示された2つの数字を単純に合算すると、北朝鮮で隔離された人は少なくとも13万5000人に達したということになる。総人口2500万人の0.54%に達する。
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一方で軍の隔離施設における死者の累計は、陸軍2800人、海軍920人、空軍460人の計4180人で、隔離された軍関係者の7.65%が亡くなったという計算になる。
ただ、隔離された人、亡くなった人すべてがコロナによるものとは断定できない。当局は、発熱、呼吸困難など新型コロナウイルス感染症に似た症状を示した人は、片っ端から施設に収容している。
また、衛生状態が劣悪で様々な伝染病が発生しており、医薬品の不足や栄養失調で亡くなる人も少なくないからだ。
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隔離施設の運営実態もひどい有様だ。収容された人にはまともな食事も薬も与えられず、暖房のない部屋、それも床に寝ることを強いられ、収容されたことで逆に健康を害して死んでしまう人が続出している。
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隔離施設に移送するのではなく、部隊全体を隔離状態に置く措置も取られている。
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平安北道の軍関係者によると、先月末に中国との国境線沿いにある義州(ウィジュ)の国境警備隊の哨所(監視塔)で勤務していた隊員3人が発熱症状を示し、連隊の軍医所に移送された。朝鮮人民軍は毎年12月から翌年3月末まで冬季訓練を実施するが、その初日の今月1日、小隊全体を集団隔離せよとの連隊参謀部の命令が下された。
国境警備を代理で行うために急遽派遣された別の隊員の間でも、治療に当たる軍医の間にも不安が広がっているが、当局は「世界的に蔓延している悪性伝染病を徹底的に遮断するための先制措置」「悪性ウイルス(コロナ)ではなく、インフルエンザや急性呼吸器感染症だ」「集団隔離は、兵舎での集団生活による集団感染を防ぎ、戦闘力を補強するための最善の選択」などと説明している。