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北朝鮮当局は今のところ、国内における新型コロナウイルス感染者の発生はないとの立場を変えていない。その一方で、コロナの疑いで隔離される人の数は急増していると、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

情報筋が明かした当局の集計によると、今月1日の時点で国指定の施設に隔離された人の数は、累計で8万1000人に達した。この数値には、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部の人数は含まれておらず、実際にはこれより遥かに多いと思われる。

北朝鮮は現在、各道の朝鮮労働党委員会が地域内の隔離施設を統括しており、管理は党委員会傘下の緊急防疫委員会が担当している。

当局はこれらの隔離施設以外にも、全国に10ヶ所の施設を指定して、重症患者を個別に隔離して管理している。地域別の隔離対象者、重症患者、死者の数は明らかになっていない。平安南道(ピョンアンナムド)安州(アンジュ)にある社会安全省(警察庁)の施設に隔離され、死亡した人の数が300人を超えていることだけが漏れ伝わっている。

このような数値は、北朝鮮当局が世界保健機関(WHO)に報告したものと大きく乖離している。WHOの報告書によると、先月22日の時点での累積隔離者数は3万2011人で、当局の独自集計より5万人近く少ない。また、WHOの報告書は、北朝鮮でコロナの検査を受けた人は1万人を越えているが、感染者は1人もいないとしている。

(参考記事:北朝鮮、コロナで4千人超隔離中…WHO、情報共有を要請

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北朝鮮国内でも「コロナ感染者ゼロ」に対して、疑問の目を向ける人は少なくない。

別の情報筋は「すでに多くの人が、実際にはコロナ感染者がいると思っている」「さもなくば、熱を出して死ぬ人がここまで多いことが理解できない」と述べた。

北朝鮮からはパラチフスと腸チフス、急性腸炎など、コロナ以外の感染症の頻発が伝えられており、熱病患者、隔離者と言えどコロナでない可能性も高いが、隔離施設の医療スタッフは当局の見方とは異なり、施設内での死者をコロナによる死亡と判断しているとのことだ。

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(参考記事:全世界はコロナで苦しみ、北朝鮮はチフスで苦しむ

当局は医療スタッフに対し、コロナ感染と関わる発言を徹底的に控えるように警告を発している。情報筋は「元帥様(金正恩党委員長)自らが、世界に向けて『わが国(北朝鮮)にはコロナがない』と言ったのに、一介の医師や幹部がむやみにコロナに言及することなどできない。そんなことをしたら、舌と首が飛ばされることになるだろう」と述べた。

北朝鮮の金正恩党委員長は先月10日に、朝鮮労働党創立75周年を記念して行われた閲兵式(軍事パレード)で行った演説で、次のように述べている。

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世界を恐怖におとしいれている悪性の伝染病からこの国の全ての人をついに守り抜いたというこの事実、わが党が当然なすべきことであり、当然の成果と言うべきなのでしょうが、なぜか、守り抜いたというこの感激の喜びに目がかすみ、みなさんの健康な姿を見ると、「ありがとうございます」という言葉以外に言うべきことがありません。

(参考記事:金正恩氏が党創立75周年軍事パレードで行った演説全文

北朝鮮において最高指導者は絶対の存在であり、その言葉も絶対だ。「何一つ間違っているわけがない」というのが大前提なのだ。コロナの発生を認めることは、最高指導者の無謬性に傷をつけてしまうというわけだ。

「今更コロナが発生したと認めると、最高指導者のイメージが乱され、労働党の医療の方針が間違っていたことを認める形になる。感染者が発生したとしても、国際機関に公式に報告する可能性はほぼないだろう」(情報筋)

もし、北朝鮮がコロナ発生を認めるとするならば、金正恩氏ではなく幹部が悪かったという理屈になるだろう。命令により問題が起きたとすれば、その責任は命令を忠実に執行しなかった幹部にあるという理屈だ。そうなれば、幹部の首が飛ぶことになるのは言うまでもない。