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人口2500万人の北朝鮮で、携帯電話のユーザー数は600万人以上と言われている。当然のことながら、その通信は当局に監視されている。また、携帯電話に保存されたファイルに対しても監視の目を強めている。韓流ドラマ、映画、K-POPのPVなど、ご禁制の映像を見たりシェアしたりするのに広く使われているからだ。

デイリーNK編集部が2018年に入手した北朝鮮のチェコム合営会社製のスマートフォン「平壌2423」は、パソコンとの接続ができなくなっており、SDカードを挿入すると無条件で初期化を要求する仕様になっているなど、最新型になればなるほど、「韓流拡散防止機能」の充実度が増している。

(参考記事:北朝鮮の携帯端末に埋め込まれた「監視ソフトウェア」の正体

しかし、「国に政策あれば、庶民には対策あり」と言われるお国柄だけあり、スマホユーザーは様々な手法で監視の目を逃れようとする。

最近、デイリーNK編集部が入手したソフト「チャムメ1.0」(オオタカ)も、そのような目的で使われているようだ。

このソフトは、Windows7と10を搭載したパソコンなら、インストールせずに実行できる。動画、イメージ、文書、音楽のファイルを保存された映像ファイルをこのソフトに読み込み、使用するデバイスを携帯電話かタブレットパソコンかを選び、携帯電話の固有番号「IMEI」を書き換え、問題がないように変換させるというものだ。

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北朝鮮の携帯電話事情に詳しい専門家によると、北朝鮮製の携帯電話には自主認証と国家認証の2種類のファイル認証システムが搭載されており、今回のソフトは前者をクリアするためのもののようだ。

スマートフォンAのIMEIの書き込まれたファイルを、スマートフォンBにコピーすれば、自主認証システムが働き自動的に削除される。この自主認証を書き換えるのが今回のソフトだ。ちなみに、国家認証を受けたファイルなら、どちらのスマートフォンでも問題なく実行できる。

ソフトの出どころは不明だが、オオタカは北朝鮮の国鳥で、金正恩党委員長の乗る専用機の名前でもあるため、ご禁制のファイルを見るためのものではなく、何らかの別の用途で作られたようだ。それが逆に韓流を見るために利用されていることが考えられる。

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ちなみに、今回の「チャムメ1.0」の使用期間は2015年1月1日から12月31日までに制限されているため、新しいスマートフォンでは機能しない可能性もある。その代わり、新たなソフトが登場している。

デイリーNKの内部情報筋は、大学生の間で流行している「ビドゥルギ」(ハト)というソフトを紹介した。これは、スマートフォンに保存された違法なファイルの取り締まりを避けるためのもので、違法映像取り締まり班の109常務が検査を行っても、パスワードを解けなければファイルの存在自体を見つけられないようになっている。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が「ある要求」に耐えきれず選んだ道とは…

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ただ、スマートフォンでも機種によって使えるソフトに違いがあり、情報筋によると少なくとも3種類が存在する。アリランブランドのものならどの機種でもソフトが使え、違法な映像をいくらでも安心して楽しめるという。

ちなみに、上述の「チャムメ1.0」は「ビドゥルギ」の初期バージョンである可能性があるが、詳細は不明だ。

当局が取り締まりを強化し、処刑を含めた厳罰で対処しているが、ただでさえ娯楽の少ない北朝鮮で、人々は韓流の魅力にハマり、こんなソフトまで使って見ようとしている。

韓流の影響は北朝鮮の文化、習慣や人々の考えを変えるところにまで至っている。いくらルールで取り締まっても、人の感性を刺激するエンタテイメントには太刀打ちできないのだ。

(参考記事:【動画】中朝国境に立ち上る黒煙、密輸された韓国製品を焼却処分