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一時期、日本のメディアを賑わせていた「コロナ離婚」。新型コロナウイルスの感染拡大により収入が減少した、テレワークにより在宅時間が増加したことで不満が蓄積した、などと言ったことが原因に挙げられていたが、今のところ、離婚増加を示す根拠となる数字は示されていないようだ。

海の向こうの北朝鮮でも、コロナ離婚が増えつつあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

北朝鮮で今年に入って離婚が増えていると語ったのは、北朝鮮の親戚と頻繁に連絡を取り合っている中国・丹東の情報筋。その理由はもちろん経済的なものだが、日本とはかなり事情が違う。

北朝鮮男性は、いずれかの職場に属することが法律で義務付けられているが、女性には適用されない。日本で言う専業主婦のことを家頭女性と呼ぶが、国が認める「仕事」を持たない彼女らは、市場で商売し現金収入を得ている。一方の男性は給料をもらってはいるものの、子どもの小遣い銭にも満たないほどの超薄給。一家を経済的に支えているのは、女性というのが一般的だ。経済的な構造の変化は、夫婦の関係にも大きな変化をもたらした。

(参考記事:妻に優しくなった北朝鮮の夫たち…亭主関白の末路は「餓死の恐怖」

今年に入ってからの新型コロナウイルスの感染拡大。当局は、その対策として市場の閉鎖を命じたが、商人らが集団で抗議し、命令を撤回させた。営業が全くできないよりはマシだが、開店休業状態であることに変わりはない。

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そんな経済的な要因で様々な軋轢が生じ、離婚を選択する夫婦が増えているというのだ。

(参考記事:コロナ対策の市場閉鎖に北朝鮮国民が猛反発「権力機関も恐れない」

北朝鮮の離婚事情も特殊だ。

当局は離婚を社会悪と見なし、「離婚が社会と革命を利する場合のみ容認する」として、ハードルを高くしている。協議離婚は廃止され、裁判離婚のみが認められており、健康問題、不倫、家庭内暴力、重大な違法行為など許可事由が非常に限られている。それが、殺人事件につながってしまう例もある。

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(参考記事:「北朝鮮の女性医師、不倫相手と共謀しアル中夫を殺害

そんな事情があるため、離婚しようとする夫婦は、法的な離婚手続きを踏まずに別居する「事実婚」ならぬ「事実離婚」とも言うべき状態を選択することが多いという。

また、北朝鮮にいる知人と頻繁に連絡をとっている中国・延吉の情報筋は、今年に入って離婚や結婚の延期、取り消しが相次ぐと同時に、婚姻届を出さずに結婚生活に入る若い夫婦が増えていると伝えた。

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今のような不安定な経済状況では、結婚したところでいつ離婚することになるかわからないため、「離婚したくても出来ないリスク」を避けて婚姻届を出さず、また、子どもも持とうとしないという。

情報筋は、離婚する夫婦が増える様子は1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のころを思い出すとし、その当時ほどの酷さではないとしつつも、このままの状態が数ヶ月続けば、「第2の苦難の行軍」と言うべき状況になりうると懸念を示した。

平壌出身で韓国在住の脱北者のイさんは、かつては心理的なハードルも高かった離婚を、「苦難の行軍」以降には深刻なものと受け止めない風潮ができ、離婚を許可しなかった裁判官も、今では社会的変化に逆らえず、適当な額のワイロさえ掴ませれば、離婚を許可するようになっている、などと述べた。

(参考記事:数百円で量刑を3分の1にできる北朝鮮の司法制度