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先月21日、北朝鮮・黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)で公開裁判が行われた。多くの市民が見守る中で、李桂荀(リ・ゲスン)大学の運動場に引き立てられてきたのは、地元でもよく知られた不動産ブローカー、50代のリさんとオさん夫婦だった。

現地のデイリーNK内部情報筋は、公開裁判の詳しい様子を伝えたが、二人の罪状を要約すると「金を儲けた」ということになる。

夫婦は先月9日に安全署(警察署、旧称保安署)に連行され、2週間も経たずに公開裁判が行われた。10年前から不動産のブローカー業を始めた夫婦の1つ目の罪状は、国の建てた住宅を売買する違法行為を広範囲に行い、不当に蓄財したというものだ。

北朝鮮では個人の住宅所有は認められていないため、居住権を証明する「国家住宅利用許可証(入舎証)」を売買する形で不動産の取り引きが行われる。当局も長らく黙認してきたが、最近になって取り締まる方針を示した。

(参考記事:北朝鮮、不動産売買を取り締まる方針

次の罪状は、国家機関のイルクン(幹部)とグルになって土地を買って自宅を建設、家政婦を雇って仕事をさせるなど非社会主義的な行為に走ったというものだ。

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地方都市のトンジュ(金主、新興富裕層)の中には、郊外の土地を買って豪邸を建てる者もいる。当然ながら違法行為だが、そんなものはワイロさえ支払えばどうにでもなる。

(参考記事:北朝鮮のニューリッチ、最近のトレンドは「郊外の豪邸に住む」

また、家政婦を雇入れて家事をさせる行為は、富裕層の間で広く行われているが、そもそも個人が金品を渡して仕事をさせるのは、行政処罰法218条で禁じられた労力搾取に当たる違法行為で、最高刑は3ヶ月以上の労働教養処分(事実上の懲役刑)だ。

(参考記事:北朝鮮の家政婦たちは「夫の月給の30倍」を1カ月で稼ぐ

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さらには、最近になって近隣の農場から金を払って畑を借りて、仕事がなくブラブラしている人たちを雇い入れて日当を支払ったという「犯罪事実」もあった。刑法114条は、個人が企業を経営して営業活動をし、多額の利益を得た場合には最高で2年以下の労働鍛錬刑に処すると定めている。

このように見ると、北朝鮮の法律をまともに適用すると、個人による商行為の多くのが違法になってしまう。北朝鮮の市場経済化は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降になし崩し的に進んだが、これを嫌った金正日総書記は2004年に刑法を改正、より細かく個人の経済行為を取り締まろうとした。しかし、思惑通りには行かなかった。

トンジュが主導する形で進められてきたのが今までの市場経済化だったが、当局は最近になって、市場経済の拡大を抑えつつ経済の主導権を国の手に取り戻し、富裕層の増加を抑えようとする動きを見せている。今回の摘発もその一環の可能性がある。

(参考記事:北朝鮮版「細うで繁盛記」の悲惨過ぎる結末

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司法関係者は夫婦の罪状を読み上げた上で、「彼らの犯した行為は、昔の地主を夢見る者どもの行為であり、搾取階級の本性で、見逃せない」「平等に豊かに暮らす社会主義を壊す行為」と断罪すると、裁判長は「あの者どもを逮捕しなさい」と命じた。

判決が言い渡されないまま、夫婦は車に乗せられて再び安全署に連行された。いかなる処罰が下されるかはもう少し時間を置かなければわからないというのが、情報筋の見方だ。

沙里院には商売で儲け自宅を建てて家政婦を雇っている人が少なくないが、そんな人たちは恐怖に震えているという。