世界で最も人権侵害の著しい国と言われている北朝鮮の中で、さらにひどい人権侵害が横行しているのが拘禁施設だ。衛生状態は最悪で、まともな食事は与えられず、家族からの差し入れがなければ生き残れない。
また、暴力、性的暴力は頻繁に起きている。その実態は元受刑者や元警備兵の証言で明らかになっている。
(参考記事:北朝鮮収容所「兄弟は衆目の中で斬首された」…元女性警備兵が証言)そんな教化所から逃げ出そうとする人もいる。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、会寧(フェリョン)市にある全巨里(チョンゴリ)教化所(刑務所)で先月末に脱走事件が起きたと伝えた。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
脱走を図ったのは教化生(受刑者)の男性2人だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面2人は、教化所のそばにある畑にトウモロコシの苗を植える作業に動員されていた。山に背の高い草が生い茂っているのを見て、これなら逃げ切れるかも知れないと思ったのだろう。畑仕事の休憩中に逃走を図った。
教化所は即時逮捕令を出して、安全署(警察署、旧称保安署)、保衛部(秘密警察)、労農赤衛軍に加え、地域の機関、企業所の職員まで動員して、捜索活動に乗り出した。また、この事案の報告を受けた平壌の社会安全省(警察庁)は、教化局副局長らを派遣し、捜索の指揮に当たらせた。
2人は脱走から3日目に発見されたが、逮捕の過程で銃撃を受け、1人が腹部に2発、1人は足に1発被弾し、重傷を負った。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面2人は取り調べで脱走の動機を語った。極度の空腹に加え、食べ物のことでけんかになったせいで、今年4月に赦免(恩赦)の対象から外れてしまった。これをきっかけに2人は仲良くなり、一緒に逃亡を図ろうと計画するようになった。
(参考記事:北朝鮮で大規模な恩赦「刑務所のコロナ対策」の可能性)うち1人は、中国キャリアの携帯電話を使って密輸を行った罪で有罪判決を受け、この教化所で受刑していたが、脱走後に知り合いの中国の業者に連絡して川を渡って中国に逃げ込む手はずまでしていた。
教化所は2人に対して「お前らのような犯罪者は死んでもいい」として、治療を行っておらず、おそらく数日は持たないだろうと見られている。もし生き延びたとしても、刑期が大幅に伸ばされ、生きて出ることはないだろう。
(参考記事:「自由への逃走」に賭けて失敗した北朝鮮高官の悲惨な末路)