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北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)は、平均海抜1338メートルの高地にあり、夏は清涼で冬は極寒となることから農耕には適していない土地だ。道の面積全体に占める農耕地の割合は6.2%に過ぎず、うち97.5%は畑だ。つまり稲作ができる地域はごく一部で、ほとんどはジャガイモ、トウモロコシなどの栽培だ。

そんな両江道だが、中心地の恵山(ヘサン)は、全国有数の食糧の集積地として知られている。川を挟んで向かい合う中国吉林省から大量の食糧が合法、非合法問わず持ち込まれるからだ。全国で食糧の流通量が最も多く、価格も安かったため、全国から買い付けに来る商人が集まっていた。ところが最近になり、その様相に大きな変化が生じている。

米政府系のラジオ・フリー・アジアは、食糧を買い付ける商人が、両江道など中国との国境に面した地域ではなく、平壌周辺、韓国との軍事境界線に近い地域など、南に向かっていると報じた。

両江道の情報筋は、長期化する新型コロナウイルス対策で貿易が完全に停止したことで、かつては豊富だった道内の穀物の在庫が底をついてしまい、現地の商人は南の地域に穀物の買い付けに行っていると述べた。

特に今の季節は、前年の収穫物が払底し食べ物がなくなる端境期。コメ価格は1キロ5000北朝鮮ウォン(約60円)以下だったのが、8500北朝鮮ウォン(約102円)まで高騰してしまった。

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両江道の東隣、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、コメ不足が深刻化し、価格が恵山と同じレベルまで上昇したことで、多くの商人が小麦やジャガイモを仕入れるために南へと向かっていると伝えた。

彼らが目指すのは、平安南道(ピョンアンナムド)の安州(アンジュ)を中心に広がる十二三千里平野、黄海道(ファンヘド)の載寧(チェリョン)、延白(ヨンベク)などの平野部に広がる大穀倉地帯だ。

一時期はコロナ対策として、他地域への移動が厳しく制限されていたが、国民の不満の高まりに恐れをなした当局は、制限を一部緩和する措置を取ったため、他地域での買い付けも以前よりはやりやすくなっている。

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国内用パスポートに当たる旅行証や、地元の衛生貿易所が発行する健康確認書があれば他地域への移動が可能になったが、食糧不足が深刻になったことから、中には書類なしに南へ向かおうとする人もいると情報筋は伝えている。

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しかし、いくら大穀倉地帯とは言え、人口2500万の北朝鮮国民すべてに食糧を行き渡らせるほど食糧に余裕があるわけではない。非効率な集団農業、非科学的なチュチェ(主体)農業、経済制裁による営農資材の不足などのせいで、農業生産には限界がある。

2012年には、当局が金正恩党委員長の「指導者デビュー」を祝う祝賀会などに使うために、大量の食糧を強制的に徴発したことから、青丹(チョンダン)郡を中心に、万単位の餓死者が発生。飢えた人々が家族の亡骸に手を伸ばす「人肉事件」の悲劇すら伝えられた。

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