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北朝鮮の江原道(カンウォンド)にある洗浦(セポ)と言えば、金正恩党委員長がぶち上げた畜産の一大拠点「洗浦地区畜産基地」の計画地で、2012年11月から工事が始まっている。そのモデルは、彼が幼年期を送ったスイスであるようだ。

5万ヘクタールの敷地に牧草地、畜舎、畜産物加工工場、飼料となる作物を栽培する畑、労働者が住む住宅など数多くの施設を建設するこのプロジェクトは、2017年10月に完工式を迎えた。

(参考記事:金正恩氏「北朝鮮スイス化計画」は挫折目前?

この畜産基地でアフリカ豚熱(旧称アフリカ豚コレラ)が蔓延し、家畜が次々に死んでいると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

アフリカ豚熱が発生したのは先月末のことで、今月1日までの間に豚はもちろんのこと、羊、山羊、ニワトリ、カモ、アヒルなど6000に達する家畜が死んだ。

報告を受けた当局は、死んだ家畜を焼却、または地中に埋めるよう指示した上で、調査隊を派遣した。そして調査の結果、現場が感染予防対策を怠り、餌と畜舎が汚染されたことが原因だという結論が下された。

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アフリカ豚熱は、元々はサハラ以南のアフリカにしかない感染症だったが、2007年にジョージア(旧グルジア)に侵入、ヨーロッパ全体に拡散後、2018年8月には中国遼寧省で発生し全土で猛威を奮った。その後に隣接する北朝鮮に流入したと思われ、昨年2月頃から家畜が大量死したとの報告が相次ぎ、当局は感染拡大の防止対策として家畜の移動、販売などを禁止していた。

一度は抑え込みに成功したかに見えたアフリカ豚熱だが、今年に入って再び流行が始まっている。

(参考記事:新型コロナに苦しむ北朝鮮でアフリカ豚熱再発

ただでさえ、新型コロナウイルス対策として徹底した防疫が呼びかけられていたのに、現場で適切が対応が取れなかったことで、畜産基地幹部の責任問題に発展しそうだと情報筋は見ている。金正恩氏が現地を何度も訪れるなど並々ならぬ関心を見せていた畜産基地だけあって、幹部は厳罰に処される可能性がある。

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金正恩氏は、管理不備でスッポンを死なせたとして、大同江スッポン工場の支配人を銃殺した前歴がある。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

これに対して畜産基地の幹部たちは「酸性化した土を耕して、新しく研究した朝鮮式の草の種を蒔いて牧草地を作る作業を行っていたが、感染病でおじゃんになった」「一所懸命やったのにこんなことになり、唖然としている」「われわれもそれなりに頑張ったのだがこんなことになった」などと、釈明しているという。

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追及の矛先は幹部だけではなく職員にも向けられている。

一部の職員は死んだ家畜を焼却、または地中に埋めよとの指示に背き、肉や内臓を自宅に持ち帰ったり、市場に売りに出したりしている。アフリカ豚熱は人間には感染しないが、感染した家畜の肉が流通することで感染が拡大してしまう。このような現象に対して当局は「調査を行え」との指示を下している。もしかしたら、緑の草原が公開処刑により赤く染められることになるかもしれない。

(参考記事: 謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」