新型コロナウイルス対策として北朝鮮政府は、全国の学校に対して冬休みを延長する形で新学期の開始を遅らせる措置を取っているが、これが二転三転を超えて七転八倒の様相を呈している。

当局は、今年2月20日に新型コロナウイルスの拡散防止策として全国の小中高校、大学、幼稚園、託児所に対して冬休みを延長させる形で休校措置を取った。

通常、冬休みは幼稚園と小中高校は12月中旬から2月中旬まで、大学は1月中旬までだ。当初はこれを、3月末まで延長することにした。しかし、3月16日にさらに延期することを決定。4月3日には3度目の延期決定を下したが、学習の遅れを懸念する金正恩党委員長の意見に基づき、先月17日から学校を再開することになった。

(参考記事:北朝鮮、3度目の休校延長を撤回「金正恩氏が心配したから」

実際、先月17日から大学と高級中学校(高校)3年生の授業が再開され、太陽節(金日成主席の生誕記念日、先月15日)の宣誓を行った上で、通常授業に戻ったと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

ところが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は先月21日、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の教育機関に務める情報筋の話として、「5月1日に新学期を迎えることになっていた全国の初高級中学校(中学校と高校に相当)だが、18日に延期された」と4回目の新学期延期を伝えた。

(参考記事:二転三転する北朝鮮のコロナ休校、新学期は5月中旬に

それがさらに6月初めまで延期されたと、RFAの別の情報筋が伝えている。つまり、5回目の延期だ。

地域によっては新型コロナウイルスの感染が抑え込めていないことから、児童・生徒の集団感染を防ぐために取られた措置だが、情報筋は「コロナを抑え込んだと発表していた中国・遼寧省で最近また感染者が発生したことに、教育当局が過敏に反応している」との見方も示している。

両江道が接しているのは遼寧省ではなく吉林省だが、14日午前0時の時点で域外で感染した住民が3人、地域内で感染した人が22人に達している。7日に感染が確認された、公安局で洗濯係として働く45歳の女性から急速に感染が広がり、吉林省第2の都市の吉林市全域が13日から部分的なロックダウン(都市封鎖)に入っている。

一方で、遼寧省では3人の感染が確認されているが、10日に感染が確認された男性は5日に吉林市を訪れていたと発表されている。

遼寧省と国境を接している平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、学校再開が再び延期されたことで、「新型コロナウイルスは気温が上がればSARSウイルスのように消えると聞いていたが、そうなっていない」として不安が広がっていると伝えた。また、政府の無策に対しても不満の声が高まっている。

「コロナ事態でまともに食べられない児童・生徒たちがずっと家にいて、栄養失調で集団で倒れるのではないか」(情報筋)

子どもたちは集まることや移動することを禁じられ、親たちはコロナ対策の影響で市場での商売ができない。政府はその違反者を厳しく処罰するが、食糧支援などは一切しない。このままではコロナではなく栄養失調で死んでしまいかねないというのだ。

(参考記事:金正恩、高校生にも問答無用…「行動制限」破りに鉄槌

コロナ対策に束縛されているのは、学校の教員たちも同じだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、教育省は先月29日、幼稚園と小中高、大学に対して学期の開始と新型コロナウイルスの感染予防に関する指示を下したが、「後代教育事業の直接の担い手である教員は、国際的な伝染病で遅れをきたした授業と、未来に国を率いる学生の健康を考慮し、個人的な事情と生活は遅らせるべき」として、今年いっぱい他地域への移動を禁止する措置を取った。

例外となるのは家族に不幸があった場合だが、それを示す書類がない限り、国内移動に必要な旅行証を発行しないという厳しさだ。

「教員は遅れをきたした授業を伝染病による国家的な問題とするのではなく、授業を続けるための対策を示し、現実とぶつかることによって生じる負担に果敢に打ち勝たなければならない」(指示内容)

国のせいにせず、自力更生で解決せよと、問題解決を丸投げしているのだ。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】台風13号上陸で被害続出も国からの支援は皆無

    関連記事