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北朝鮮当局は、新型コロナウイルスの拡散防止策として全国の小中高校、大学、幼稚園、託児所に対して3回に渡って冬休みを延長させる措置を取ったが、ここに来て方針を撤回し、学校を再開させる方針を決めたと、デイリーNKの内部情報筋が報じた。

今月3日、教育省は2月20日と3月16日に続いて冬休みを延長する形で休校措置の時期を延長する方針を示したが、情報筋によると、10日午前になって急に「17日から学校を再開する」との指示を下し、3度目の休校措置を撤回した。その理由は「元帥様(金正恩党委員長)が心配されているというお言葉による方針執行の一環」(情報筋)だという。

(参考記事:北朝鮮の教育現場で困惑広がる「コロナで休校3回延長」

金正恩氏は、教育現場の実情を調査する過程で、イントラネット(国内でだけ繋がるインターネット)のオンライン教育システムが貧弱であることと指摘し、現状において教育の進度をさらに遅らせば、国の興亡盛衰を左右する次世代の教育事業に大きな空白が生じうるの懸念を示したという。

(参考記事:金正恩、高校生にも問答無用…「行動制限」破りに鉄槌

実際、イントラネットを使ったオンライン教育を利用できるのは、携帯電話、スマートフォン、パソコンを所有している児童・生徒の中でも、高額の通信料を負担できる経済的余裕がある幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)の家庭に限られ、不公平だとの声が上がっていた。

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金正恩氏は、そのような不満を意識してか、休校の長期化に懸念を示し、それを受けて教育省が方針を覆した形だ。

同時に金正恩氏は、オンライン教育システムのインフラ構築についての指示を下した。実際、12日に開催された最高人民会議第14期第3回会議で遠隔教育法と教育予算の拡充について決定がなされている。

教育の条件と環境を改善し、保健医療部門の物質的・技術的土台を強化し、スポーツと文学・芸術をはじめ社会主義文化を朝鮮式に発展させることに歳出総額の36.3%を回した。

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(4月13日朝鮮中央通信の記事「朝鮮民主主義人民共和国のチュチェ108(2019)年国家予算執行の決算とチュチェ109(2020)年の国家予算について」より)

(参考記事:「コロナ感染」で延期か…北朝鮮の最高人民会議

教育予算の拡充とは名ばかりで、オンライン教育充実に当てられる費用は「忠誠の資金」などの名目で、児童・生徒の親から半強制的に徴収される可能性が高い。

(参考記事:「子どもの将来」もカネで売買される北朝鮮の拝金主義

各学校では、教育省の指示に基づき15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)の宣誓の集まりを、小学校2年生以上の児童、生徒を集めて17日に行った上で、当日は午前の授業だけ行い、翌日から通常通りに戻る予定だ。また、既に教育日程にはかなりの遅れが生じており、当初予定されていた7〜8月の夏休みを使っての補習は当初の計画通り行うとのことだ。

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17日に学校を再開する方針が示されたことについて、北朝鮮国内からは安堵の声が上がっている。

平壌にある大学の寄宿舎で、実家にコロナ疎開することもできず、事実上の隔離状態に置かれていた地方出身の学生たちは、ようやく隔離が解除された形になった。また、利用していた託児所や幼稚園が休業していた共働き夫婦も、育児の負担から解放された。

「国内に新型コロナウイルスの感染者はいない」という公式発表に疑問の目を投げかけていた国民の中にも「ついにコロナを克服できたのではないか」という希望を持つ人が現れたという。

現在も玄関に「隔離」と書かれた家が点在する状況だが、あまり気にしないというのが全体の空気だと情報筋は伝えている。「コロナ疲れ」や「正常性バイアス」に加え、「感染者はいない」という公式発表がある程度功を奏しているようだ。

「『新型コロナウイルスはわが国にはない』という持続的な宣伝に同調する声もあちこちで聞こえる」(情報筋)

しかし、依然として安心できる状況ではない。北朝鮮に隣接する中国の東北地方では、ロシアからの入国者の間で新型コロナウイルスの陽性判定を受ける人が増え、「第2波」と言える現象が起きている。

黒龍江省衛生健康委員会の発表によると、今月3日のモスクワ発のアエロフロート1700便に搭乗し、ウラジオストク到着後に陸路で中国に入国しようとした人のうち、23人が新型コロナウイルス陽性の判定を受けている。同様のルートを使って黒龍江省に入り、陽性が確認された人は先月28日から今月14日までの間で79人に達する。また、感染が確認された遼寧省の21人、吉林省の7人も海外からの帰国者だ。

ロシアとの国境に接する黒龍江省の綏芬河市は今月8日、ロックダウン(都市封鎖)に踏み切り、国境を封鎖する措置を取っている。