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国際社会の制裁、新型コロナウイルスで財政難に苦しむ北朝鮮は先月、17年ぶりの公債発行に踏み切った。

デイリーNKの内部情報筋によると、金正恩党委員長は先月11日、党中央委員会政治局会議で公債の発行を承認した。発行を担当する内閣委員会は、急ぎ印刷を済ませ、15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)に朝鮮中央銀行に輸送した。

そして国の資金供給を受けている工場、企業所などに対し、20日から現金の代わりに公債を受け取るよう指示が下された。資材調達のための企業間の決済は、現金ではなく公債で行なえということだ。さらに、発行された公債の4割は、個人を対象に外貨で販売される。

しかし、これに対する反発は大きく、トンジュ(金主、新興富裕層)や幹部の間では、輸入品の買い占めやドル買いが起きていると伝えられている。当局が「忠誠心の発露」などとして購入を強いることが目に見えているからだ。実際に17年前に半強制的に買わされた公債が、償還されずに大損した記憶が生々しいからでもあるだろう。

(参考記事:平壌で「買い占め」発生…金正恩氏の不在中に混乱広がる

とかく評判の悪い公債だが、買わない選択肢は存在しないようだ。

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デイリーNKの別の情報筋によると、首都・平壌郊外の江東地区炭鉱連合企業所で先月末、販売課長が、坑道を所有するトンジュを呼び集めた。

北朝鮮の鉱山の中には、トンジュからワイロを受け取って採掘権を譲渡し、採掘をさせているところがある。トンジュは労働者を雇って採掘を行い、利益の一部を鉱山に上納する。鉱山は資金難を解消すると同時に、正常に操業できていると上部に報告する。

(参考記事:北朝鮮の「ゴールドラッシュ」…“金鉱経営”に乗り出した新興富裕層

販売課長は、坑道の所有主であるトンジュたちに「米ドルを払って、企業所の国家公債売買計画を一律に実行しなければならない」と伝えた。炭鉱は、国から課された公債販売のノルマを、所有主に押し付けようとしたのだ。

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所有主はいくら採掘権を買い取ったとは言え、あくまで闇取引であり、法的に権利が保護されているわけではない。企業所からにらまれると、採掘権を取り上げられかねない。ほとんどの所有主がおとなしく従う中で、唯一反旗を翻したのが、リさんという男性だった。

リさんは「公債を買わなければどうなるのか」と質問した。販売課長は「それでは党の政策を貫徹しない反動分子ではないか」と答えたところ、リさんはすぐさま「国や企業所は、私たちが働いて炭鉱を食わせているというのに、それに報いてくれたことも、何かしてくれたこともないではないか」と反論した。話し合いはやがて喧嘩へと発展し、大騒ぎとなった。

販売課長はその日のうちに企業所の党委員会に報告した。党委員会は安全委員会を開催した。安全委員会とは、道・市・郡の党委員会委員長と人民委員会の委員長(知事や市長)と副委員長、保安機関の責任者が集まり、緊急の事案を議論する場だ。ここでの議論の結果、リさんを保衛部(秘密警察)に突き出すことにした。

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そして今月6日。国家保衛省は突然、企業所の労働者会館に炭鉱の労働者全員を集めた。その場にやってきたリさんは「言葉反動(反動分子のようなことを言った)」だとして突如として逮捕され、「党政策非難罪」という罪状で、裁判を経ずにその場で処刑されてしまったのだ。

(参考記事:「オレの青春を返せ!」金正恩批判がバレてしまったある兵士の運命

北朝鮮の司法制度では、法に定められた手続きを踏んで被疑者を起訴することになっている。しかし政治犯の場合、しばしばそうしたルールが無視され、超法規的に刑が執行される。

見せしめは効果てきめんだったようで、所有主たちは口々に恐怖を語り「公債を買わなくては」という空気になっているという。

「管理所(政治犯収容所)に行くために外貨稼ぎをしているのではない」
「あんなことをしても、こんなことをしても殺されるのは同じだ、命だけは繋いでおこう」
「いくらカネがあっても死んだらどうしようもない」

(参考記事:「人間も犬のように死ぬんだな」北朝鮮で再開された公開処刑の目撃談

話はこれだけで終わらない。

保衛部は、リさんが所有していた坑道と大型トラックを没収し、国の所有とした。さらには、処刑当日にリさんの自宅を急襲し、目ぼしい家財道具をすべて没収した上で、妻と子ども2人を収容所送りにしてしまった。

(参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

妻の実家の家族は「こうした問題が起きると、妻に対しては『離婚すれば助ける』という選択肢を与えるものなのに、今回はそれすらなかった」と当局の非道なやり方に激怒。妻の母は「私も娘と一緒に管理所に連れて行け」とわめきたてた。そのせいで母親は保安署(警察署)に連行され、近く労働鍛錬刑(懲役)6ヶ月程度の刑が下されるだろうというのがもっぱらの噂だ。