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国際社会の制裁と新型コロナウイルスによる経済難、外貨不足に陥っている北朝鮮が17年ぶりとなる国債の発行を計画していることがわかった。

デイリーNKの内部情報筋によると、当局は最近、高位幹部を集めて国債発行に関する議論を行った。また、紙幣の印刷を行っている平安南道(ピョンアンナムド)平城(ピョンソン)にある商標印刷工場から7日、以前とは異なる色の汚水が排出されたのが目撃されるなど、国債発行に向けた兆しが観測されているとも伝えた。つまり、試験印刷が行われている可能性があるということだ。

北朝鮮が国債発行を計画している背景には、経済難にも関わらず大規模なハコモノ建設が行われていることがある。

金正恩党委員長は、最高指導者となって以降、各地にタワマン団地、ダム、リゾートなど、経済制裁下に置かれている国にはそぐわないほどのメガプロジェクトを矢継ぎ早にぶち上げ、建設を進めてきた。今年1月にはスキー場、乗馬場などを併設したスパリゾート、陽徳(ヤンドク)温泉文化休養地を完成させている。

しかし、当初あてにしていた中国人観光客は、新型コロナウイルス対策で国境が封鎖されたことで入国できず、急遽、国内観光客の半強制温泉ツアーを企画したものの、高額の費用を負担できる人には限りがあり、スパリゾートでは閑古鳥が鳴いていると伝えられている。

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(参考記事:金正恩印「温泉ツアー」の責め苦に悲鳴上げる北朝鮮の庶民

そんな中でも進められているのが、平壌総合病院の建設だ。金正恩氏が建設を直接指示した施設だけあり、10月10日の朝鮮労働党創立日までに完成させることを目標に、資材供給面でも優遇されてきたが、それが限界に達したようで、国債を発行することで予算を賄おうとしている模様だ。

(参考記事:最新病院の建物崩壊も…金正恩「コロナ対策」の危なさ

北朝鮮は、朝鮮戦争中の1950年から1953年と、2003年に国債を発行している。前者は戦費調達、後者は2002年7・1経済管理改善措置で労働者の賃金が大幅に引き上げられ、市中の通貨量が急増したことから、その回収のために発行された。

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「人民生活公債」という名称で、500北朝鮮ウォン、1000北朝鮮ウォン、5000北朝鮮ウォンの3種類、いずれも10年満期で販売した。宝くじ的な性格を持たせたこの国債は、1等に当選すれば額面の50倍の償還を受ける方式だった。また、100万北朝鮮ウォン以上の購入者には「愛国表彰状」を授与し、購入を煽った。当然、購入しなければ「思想的に問題がある」として監視対象にするなど、事実上の「押し売り」を伴ったことは言うまでもない。

(参考記事:北朝鮮「労働党に入りたいなら国債買え」

しかし、今回の国債について情報筋は前回とは異なると説明した。

まず、個人に押し売りする方式ではなく、国が予算を必要とする機関に対して国債を発行し、それを現金の代わりとして、原材料の調達に使うというものだ。

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例えば、平壌総合病院の建設を行っている8建設局がセメントを確保したいとすると、まずは内閣の計画委員会に国家財政の承認を要求する。すると、当局は小切手を発行する。それを朝鮮中央銀行に渡すと領収書を発行する。それをセメント企業所に現金の代わりに渡して、セメントを購入する。

今回発行する国債の6割は、このように国家予算を必要とする機関向けの小切手として、残りの4割はトンジュ(金主、新興富裕層)に外貨で販売する形となる。

その見返りとして与えられるのは、商業権許可証、つまり営業許可だ。ビジネスを行うにあたって必要な許可証を国債を購入することで与え、大量に購入した者や、国が供給する資材を外貨で購入した者には、「愛国表彰」を与える形で、販売を促進する。

今まで、国民の外貨タンス預金を国庫に吸収するために、高級レストランやブランドショップをオープンさせたり、様々な名目で外貨募金をさせたりしてきたが、今回の国債の販売も基本的にはその延長線上にある。ただし、トンジュがこの話に乗るかどうかはわからない。当局の支払い能力に疑問符がつくからだ。

最も割を食うのは、資材を供給している企業所だろう。信頼して良いのかわからない紙切れ一枚で製品を持っていかれ、現金化が滞ることにでもなれば、たちまち資金繰りが悪化するからだ。

こうした中、幹部の間では両替商を通じて手持ちの北朝鮮ウォンを売り、米ドルを購入する動きが起きている。国債発行が決まれば、米ドル相場が急騰することを予想してのものだ。

こうして発行される国債の額は、今年度の予算の約6割に達するという。