金正恩印「温泉ツアー」の責め苦に悲鳴上げる北朝鮮の庶民

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北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは今月9日、スキー場、乗馬場などを併設したスパリゾート、平安南道(ピョンアンナムド)の陽徳(ヤンドク)温泉文化休養地が翌10日にオープンすると報じた。

それ以降、各国営メディアは陽徳温泉文化休養地のPRを行っている。9日付の平壌新聞は、「特色ある人民奉仕基地、陽徳温泉文化休養地奉仕案内」というタイトルの全面広告を掲載した。8178番に電話し、平壌高麗国際旅行社でツアー日程を調べればよい、平壌発の専用列車や、馬息嶺(マシンリョン)スキー場行きのバスでアクセスできるといった内容だ。

金正恩党委員長は、建設中の現場を7回も訪れ、竣工式にも参加してテープカットを行うなど、並々ならぬ関心を寄せていた。

(参考記事:金正恩氏、温泉リゾート地の竣工式に参加

このような宣伝は、メディア上のみならず、人民班(町内会)、各工場、企業所、機関でも行われているが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、国民が半ば強制的にツアーに参加させられていると報じた。

中国を訪れた平壌在住の華僑によると、人民班の会議では「陽徳温泉文化休養地は元帥様(金正恩氏)の格別な関心のもとに、われわれが成し遂げた世界的な温泉文化休養地」などと礼賛し、出席者に「一度は行ってみろ」などと言っているとのことだ。ツアーは2泊3日で、全員が参加するように呼びかけられている。

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無料か優待価格で参加できるならともかく、参加はすべて自己負担だ。ツアー代金は、往復の交通費、宿泊費、3時間のスキー、温泉、乗馬体験などを含めて120ドル(約1万3200円)、さらに自己負担が求められる費用も含めると200ドル(約2万2000円)になる。

平均的な4人家族の1ヶ月の生活費や、トンジュ(金主、新興富裕層)が営む私企業の月給が50万北朝鮮ウォン(約6500円)であることを考えると、「庶民にとっては高根の花」(情報筋)と言える。

しかし、無下に断れば「最高指導者への権威」への挑戦と受け止められかねない。これは、北朝鮮でも最も重い罪のひとつだ。

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(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

新年から始まった温泉ツアーに参加しているのは朝鮮労働党、政府機関の幹部やその家族、トンジュがほとんどだ。彼らは温泉を楽しみたいというより、ツアーに積極的に参加することで、忠誠心を示す目的の方が大きい。逆に参加しなければ、忠誠心が疑われることになりかねないため、生活が苦しくても無理をして参加しようとする。

元々は中国人観光客を多数誘致する目論見で建設されたこの温泉リゾートだが、中国・丹東の旅行会社関係者によると、中国人観光客は全く訪れていないという。今のところ、海外から陽徳を訪れるツアーは企画されていない。また、他の外国人が多く利用する北朝鮮専門旅行会社各社も、陽徳ツアーの販売を始めていない模様だ。

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中国の吉林省延吉の住民は、現地の旅行会社は同じ温泉でも、延吉から近い咸鏡北道(ハムギョンブクト)の鏡城(キョンソン)温泉を訪れるツアーを販売しているが、陽徳を訪れるツアーは販売していない。延吉から訪れるに、陽徳は交通の便が悪いからだ。

この住民は、北朝鮮当局が中国人観光客を受け入れる準備がまだできていない可能性があると指摘し、受け入れるのを北朝鮮国民に絞り、フィードバックさせようとしていると述べた。

また、自国民ならともかく、外国人に見せるに問題のある老朽家屋が沿道にある可能性も考えられる。