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北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2日の1面に「平壌総合病院をこれ見よがしに世界が羨むように立派に建てよう 全国にあふれる支援の熱風」と題した記事を掲載した。現在、平壌市内で工事が進む平壌総合病院の建設現場に市内はもちろん、国内の各地から支援物資が届けられているおいう内容だ。

金正恩党委員長が旗振り役となって、市内の党創立記念塔のすぐ北西側で進められている大規模な病院建設だが、国営メディアの報道とは異なり、国内での評判は芳しくないようだ。

デイリーNKの内部情報筋は、「居住地域からの移動すら許されていない地方の人々にとって、平壌の病院建設など『目にだけ豊年』(手の届かない存在)に過ぎない。それなのに支援物資や支援金を要求され、肉を削られるような苦労を強いられているのだから、人々の不満はいかばかりだろうか」(情報筋)

支援金や支援物資の類は、表向き自主的なものとされているが、実際は断ることの許されない強制募金であり、公式には徴税制度の存在しない北朝鮮における、実質的な税金の一種と言える。経済的に余裕がなくても、差し出さなければ思想的に問題があると見なされ、様々な不利益を被る。

平壌市民ならば、新しい病院を利用する機会もなくはないだろうが、許可がなければ平壌に立ち入ることすらできない地方の人にとって、この病院はまさに自分たちの血と汗からなる「絵に描いた餅」なのだ。

(参考記事:「税金なき国」で税金に苦しめられる北朝鮮の人々

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苦しめられるのは首都や地方の庶民だけではない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、全世界の北朝鮮の大使館、領事館に対して「平壌総合病院の建設に必要な建築資材調達のために自主的に資金を集めよ」との命令が下され、外交官たちの大きな負担になっていると伝えている。

また、より深刻な問題もある。

金正恩氏が着工式に参加して自らシャベルを握り演説を行ったこともあり、経済制裁や新型コロナウイルス対策の国境封鎖で資材不足が深刻化する中でも、この建設現場にはセメントや鉄骨が優先的に供給されている。

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しかし、問題は工期だ。

情報筋は、計画通りに朝鮮労働党創立日の10月10日の前には完成するだろうと見ている。実際、当局は是が非でも10月10日までに完成させる方針を強調している。国際社会の制裁には屈しないという強い意思を見せることで、内部結束を高める意味合いもあるようだ。

しかし、10月10日に間に合わせようとすると、工期があまりに短くなりすぎて、コンクリートを養生する期間が足りない。

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コンクリートは、打設から1ヶ月ほど養生させ十分に乾燥すると所定の強度に達するという。また、気温が氷点下まで下がる日には、温度を一定以上に保つなど、凍害を受けないようにする必要がある。今冬は暖冬だったとはいえ、3月初旬まで朝の気温が氷点下まで下がる日が続いていた。

つまり、工期に無理やり間に合わそうとして養生をきちんとしていないコンクリートを使って建てた病院の建物には、深刻な問題が生じる恐れがあるということだ。

平壌の平川(ピョンチョン)区域では2014年、完成から間もないマンションが突如として崩壊し、多くの人が生き埋めとなり命を落とす大惨事が起きている。またそれ以外にも、平壌市内の様々な建物が、品質を度外視して何らかの記念日に合わせて無理やり工期を短縮する「速度戦」により建てられており、崩壊の危険性を抱えていると言われている。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

金正恩党委員長も、速度戦のやりすぎには警告を発している。2014年6月20日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩氏が当時建設中だったタワーマンション団地の現地指導を行った場で、「建設においては一にも二にも質の保証に優先的な関心を置くべき」「千年責任、万年保証のスローガンの元に、建築物を百点満点で完成させよ」と指示したと報じている。

しかし、上述したような悪弊からは依然として抜け出せていないようだ。

(参考記事:「金正恩のタワマン、いずれぜんぶ崩壊」建設担当者の不安な未来

建物が完成し、金正恩氏を迎えて竣工式を行ったとしても、それで病院が開業できるわけではない。

金正恩氏の実績作りとして利用するために、外見だけを完成させ、中身はすっからかんということはよくあることだ。

例えば、2015年に金正恩氏が参加して竣工式が行われた白頭山英雄青年発電所だが、それからダム壁の崩壊が起きるなど1年以上経っても稼働できない状態が続いた。その後ようやく稼働を始めたが、充分な発電ができていないと伝えられている。このような見掛け倒しの新築巨大廃墟は枚挙に暇がない。

(参考記事:金正恩氏肝いりの発電所、完成から1年半でも稼働せず

よしんば平壌総合病院が問題なしに予定通り完成したとしても、内装工事を終え、医療設備を整え、実際に運営できるようになるには1年以上かかるかもしれないと、情報筋は見ている。