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金正恩党委員長が、農業改革の一環として試験的に導入した圃田担当制。農場の土地を家族に貸し与え、家族単位で畑の世話をして、得た収穫の一部を農場に納めれば、残りは自由に処分できるというもので、働こうが働くまいが収入が変わらない従来の集団農業とは異なる、農民の生産意欲を高めるインセンティブ制度だ。中国で1980年代に導入された責任生産制(請負制)との類似が指摘されている。

成功する事例がある一方で、現実に合わない過度なノルマで収穫のほとんどを国に奪われる事態が続出している。

(参考記事:進まない北朝鮮の農業改革にやる気を削がれる農民たち

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、今月に入ってから道内の文徳(ムンドク)郡の各協同農場が、農民に農地を分け与えていると伝えた。

昨年までは、農民1人あたり1500〜1700坪の農地を分け与え、種子を配給、収穫した穀物は農民と農場が6対4で分けるという方式だった。それが今年からは能力に応じて差がつけられるようになり、人によっては1町歩(3000坪)ももらえるようになった。

農場に資金がないため、種や肥料は農民が自主的に調達するしかない。また、トラクターや田植え機は農場所有のものを使えるが、ガソリンは農民が自主的に調達する。その能力がある人に多くの家を貸し与え、生産を増やそうというのが農場の目論見だ。

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党は圃田担当制による副作用は考慮していないようだと語る情報筋。副作用とはどのようなものなのか。

「カネとコネがある農民に農地が集中的に分け与えられるが、ほとんどの貧しい農民はさらに貧しくなった」(情報筋)

つまり、農民の間に貧富の差が生じ、かつて北朝鮮が排撃の対象としていた、再び富農が現れ始めているということだ。

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「トンジュ(金主、進行富裕層)の支援を受けたごく少数の農民が、いい土地を借り受け私腹を肥やす正常ではない方向に圃田担当制が変わってしまった」(情報筋)

(参考記事:「富農」も登場、変容する北朝鮮の農村…ニューリッチ相手の商売で大儲け

黄海北道(ファンヘブクト)の農民は昨年1月、RFAの取材に、頑張って働いて収穫の7割を国に納めても食べていける食糧が確保できたとしつつも、現状をこのように批判している。

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「ひどい日照りで農業がだめになれば収穫が場合によっては半分になるが、農場の幹部は国家計画量(ノルマ)は無条件で出せと言って、収穫のほとんどを出すことを強いる。農民はすっからかんだ。その翌年には食糧不足に加え、肥料も買えなくなる。肥料と農業資材の不足で、ノルマを満たせないという悪循環が続いている」

幹部は、ノルマ未達成を批判されることを恐れ、農民から土地を奪い、トンジュに貸し出す。資金のあるトンジュは、肥料や農業資材を充分に投入し、農民を雇い入れて充分な収穫と利益を得ている。

「能力のない人は土地も借りられない。種や肥料を買って農業をできるのはトンジュくらいだ」(農民)

黄海北道では、前年の成績がよかった人は、国に収めるものと自分のものとの比率を自分で調節できる。そのため、トンジュは収穫量の半分以上を自分のものにできるというわけだ。

ノルマの分だけ穀物を生産し、残りの土地では儲かるスイカ、落花生、トウガラシなどを栽培し、市場に卸して儲けている。

(参考記事:足元のカネを掘れ!…「イチゴ栽培」で儲ける北朝鮮の人々

平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋は、現行制度の問題点を指摘した。

農民は毎年春に農地を農場から受け取るが、つまり借り受けた土地は収穫後に農場に返し、また翌年に借り受けるという方式をとっている。そうなれば、自分の土地という愛着が持てず、安定した土地管理もできないという。また、農民は農業技術を発展させようとせず、制度の効果が現れないのだという。