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金正恩党委員長は相当な「タワマン好き」だ。最高指導者となって以降、平壌市内で倉田(チャンジョン)通り、未来科学者通り、黎明(リョミョン)通りなどのタワーマンション団地を矢継ぎ早に建設させた。見栄えがするので実績として誇示するのに最適だからだろう。

国際社会の経済制裁に加え、新型コロナウイルスで国内経済はかなり苦しい状況であるにも関わらず、金正恩氏は新たなタワマンプロジェクトをぶち上げた。

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デイリーNKの内部情報筋によると、金正恩氏は今月1日に首都建設旅団指揮部と慈江道に平壌建築総合大学と国家科学院建築材料研究所の専門家を派遣せよとの指示を下した。2月末に開かれたとみられる朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議では、「平壌市と地方の住宅建設を行うための対策」について討論されたが、これを受けての指示と思われる。

また、同時に下した指示は次のようなものだった。

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「金正淑(キム・ジョンスク)通りを作れ」

金正淑とは、金日成主席の夫人で金正日総書記の母親、つまり金正恩氏の祖母にあたり「国母」とされている人物だ。彼女の名前をつけた通りを作るのは、先代、先々代が叶えられなかった夢だというのだ。

「将軍様(金正日氏)の時代に、首領様(金日成氏)の遺訓に従って、母親の名前をつけた通りを作ろうとしたが、状況が容易ではなく、できなかった」(情報筋)

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金正淑通りの建設は、自身のイメージアップ、体制の安定に有利に働くと判断したようだ。実際、自らが指揮して建てさせた数々のタワマン団地は、「金正恩時代を象徴するランドマーク」となっている。

「既に倉田通り、未来科学者通り、黎明通りなどを作って、多くの住宅を住民と科学者、大学教員らに供給した経験がある。体制の宣伝をしつつ、贈り物にもできるという点で一石二鳥という判断をしたようだ」(情報筋)

金正淑通りの建設予定地は、凱旋門のすぐそばにある牡丹峰(モランボン)区域のキンマウル洞、琵琶洞(ピパドン)、民興洞(ミヌンドン)のマンションと一戸建てが混在する地域と伝えられている。

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この地域には、高位級幹部が自費を投入して建てた住宅が数多く存在し、「取り壊しの問題が深刻に議論されている」(情報筋)状況だ。しかし、最高指導者の命令による建設であるため、結局はすべて取り壊されることになるだろう。情報筋は、家を失うことになる高位幹部を慰めるための作業も行われることになると見ている。

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一方、もう一つの対象地域の慈江道は、体制にとって非常に重要な地域だ。軍需工場が密集している関係で、通行証がなくても多くの地域へ訪問が可能な平壌市民とて、自由に訪れることのできないほど統制が厳しい。

慈江道の道庁所在地の江界(カンゲ)は「先軍革命特区」、鴨緑江に面した満浦(マンポ)は「北朝鮮第2の首都」とも呼ばれるほど重要な地域だ。朝鮮戦争中の1950年11月初めから12月中頃に、朝鮮人民軍最高司令部の地下バンカーがあった高山鎮(コサンジン)は満浦に位置する。今では革命史跡地として指定されていることもあり、北朝鮮の歴史においても重要な地域だ。

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それだけあって、慈江道の住民は特別扱いされ、1990年代中盤以降に全国的な配給システムが崩壊した後も配給が続けられた。しかし、昨今の経済難でそれも滞っていると伝えられている。そんな状況で、地域世論をなだめるための計画が立てられたものと思われる。

「元帥様は『研究者は慈江道に行って、現場の指揮部と寝食を共にして、社会主義文明国建設の斥候隊としての使命と役割を果たすことを望む」とおっしゃった」(情報筋)

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資材供給に関しても金正恩氏が承認しているので、今月末か新型コロナウイルスが落ち着けば工事が始まるだろうと情報筋は見ている。

ただ、北朝鮮のタワマンは、質より工期を優先する「速度戦」の影響で、建物に問題があると指摘されており、建設に動員された元朝鮮人民軍兵士は「何かの拍子に、建物がぜんぶ崩壊してしまうのではない」と懸念を示している。

(参考記事:「金正恩のタワマン、いずれぜんぶ崩壊」建設担当者の不安な未来