北朝鮮軍がマスクを「産地偽装」して密輸している

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北朝鮮は先月30日、中国を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大していることを受けて国家非常防疫体制を宣言し、翌日からは中国と繋がるすべての国境を事実上閉鎖し、鎖国状態となった。また、それに先立つ28日から、中国との貿易を全面的に停止した。

(参考記事:北朝鮮、新型ウイルス感染を恐れ中国との貿易を全面停止

輸出入の9割以上を占める中国との貿易がシャットアウトされた形となり、金正恩体制の安定すら損なわれかねない状況だ。

そうでなくとも北朝鮮当局は、経済制裁の影響に乱れた治安を抑え込むため、一昨年の末から公開処刑を活発化させている。

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もやは体制維持のために、手段を選ぶ余裕はない。どんなことをしてでも、新型コロナウイルスに対する国内の備えを厚くする必要がある。

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中国との貿易が中断されても、実のところ「密輸」という非公式のルートは閉じられていない。最近、中国から大量のマスクが密輸されたと、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

密輸が行われたのは今月1日の夜のことだ。

人民武力省の貿易会社、金峰合営会社は、中国の業者にマスクの注文を出した。それも、どういうわけか「南朝鮮(韓国)製が欲しい」と指定した。業者が準備したのは、と指定した。準備されたのはLG生活健康が製造した黄砂・防疫用マスクKF94だった。

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KF94は商品名ではなく、韓国政府の食品医薬品安全処のマスクの規格を指す。0.4マイクロメートルの粒子を94%以上遮断するという意味で、食品医薬品安全処と疾病管理本部は新型コロナウイルスの予防のために着用を勧めているものだ。

貿易は完全に中止させられた状況にもかかわらず、品物は新義州税関を通じて持ち込まれた。つまり、国の機関が積極的に加担した上で行われた密輸ということだ。

「切迫した状況で、質の良い製品を求めようとする考えが働いた」(情報筋)とはいえ、韓国製とあっては一般の兵士にそのまま配るわけにはいかない。非社会主義、反社会主義現象の取り締まりキャンペーンを行っているからだ。

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そこで、この会社は1日夜、税関から100メートル離れた物流倉庫で、韓国から取り寄せたマスクを、北朝鮮製に偽装する作業を行った。作業には、近隣の軍部隊の女性兵士40人が動員された。

情報筋は、マスクの量について「わからない」としつつも、動員された人々は、マスクの産地偽装作業で夜も寝られなかったとのことなので、相当の量だった模様だ。

納品先について情報筋は、全部が平壌の軍部隊、司令官クラスの利用する病院、軍の総合医療施設だと証言した。新義州の市場では、5元(約78円)だった布製マスクの値段が、2倍になっている。価格高騰を抑えるには供給量を増やす必要があるが、そういうマインドで輸入したわけではなく、「韓国製マスクが欲しい」という需要に応えて儲けようとしている可能性もある。

一般国民の韓国製品の販売、使用は禁止しながら、幹部は愛用しているという光景は今に始まったことではない。運悪く逮捕される人もいるが、高級なイメージがある韓国製品の人気は衰えることを知らない。

(参考記事:元北朝鮮軍幹部「サムスン携帯電話を愛用」した罪で逮捕