北朝鮮軍で吹き荒れる「韓流狩り」の嵐…誰もが恐れる「78号室」とは

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昨年末に平壌で開かれた朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、金正恩党委員長の発言を次のように報じている。

金正恩委員長は、全党的、全国家的、全社会的に反社会主義、非社会主義の現象を一掃するための闘いを度合い強く繰り広げ、勤労者団体の活動を強化し、全社会的に道徳紀綱を強く立てることに関する問題を提起した。

また、採択された決定書の8つの項目にも「反社会主義・非社会主義との闘いの強化と綱紀粛正」が盛り込まれたと報じている。

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この「非社会主義、反社会主義」だが、当局が考えるところの社会主義にそぐわない行為を取り締まることで、綱紀粛正や風紀取り締まりに当たる。平安南道(ピョンアンナムド)の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部情報筋は、朝鮮人民軍総政治局直属の78号室による検閲(監査)が行われていると伝えている。

78号室とは、パソコン、テレビや映像に関する取り締まりを行う部署だ。映像といえば、当局が厳しく禁じている韓流ドラマ、映画がそれにあたるが、外部情報の流入に関するあらゆる動向を把握し、総政治局組織部に報告する役割を果たしている。

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室長(大佐)、検閲部室長(上佐)、内部総合部室長(上佐、党細胞委員長を兼任)をトップに、15人のメンバーからなる。金日成政治大学、金爀(キム・ヒョク)保衛大学や一流大学のコンピュータ関連学科を卒業し、競争を勝ち抜いて78号室に入った超が付くエリートたちだ。

総政治局の思想検閲に精通した情報筋によると、78号室のメンバーは軍団長、政治委員など部隊のトップの自宅であっても、抜き打ちでやってきて有無を言わさず家宅捜索を行う。

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この検閲について情報筋は、軍内部のあらゆる思想的問題を一挙に解決するためのものと見ているが、現地では「彼らが通った後には何も残らない」などと囁かれているという。

韓流の取り締まりといえば、一般的には「109グルパ」と呼ばれる組織が行うが、彼らには軍関係者を取り締る権限はなく、軍部隊の敷地に入ることも許されていない。その代わりに78号室が取り締まりを行っており、兵士や軍官(将校)にとって恐怖の存在となっている。

109グルパと異なり、ワイロでもみ消すことは困難で、「生き残るにはひっかからないこと」との言葉が流行するほどだ。

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一方、中国との国境に面した両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、道内の普天(ポチョン)、三水(サムス)、金正淑(キム・ジョンスク)の各郡や、東隣の咸鏡北道(ハムギョンブクト)で、国家保衛省(秘密警察)、保衛司令部(軍内の秘密警察)などのメンバーからなる検閲隊が、非社会主義現象根絶に向けた取り締まりを大々的に行っていると伝えた。

現地では昨年末から、保衛司令部による厳しい検閲が行われている。

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それが年が明けてからさらに拡大した形だが、ターゲットにされているのは国境警備隊、地元の保衛部(秘密警察)、保安署(警察署)などの治安機関だ。地元住民、密輸業者、ブローカーなどとグルになったり、時には脅迫したりして、莫大な額のワイロを吸い上げてきた。特に麻薬、金属の取り引きは、治安機関が主導していると見られている。

検閲隊が最も重要視しているのは、中国キャリアの携帯電話を所持している保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)だ。彼らも、密かに外国と連絡をとっているものとみて、全面的な調査を行っている。同時に、韓流ドラマ、映画、バラエティ、K-POPなどが保存されたUSBメモリやSDカードの流通についても調査を進めている。

現地の人々は検閲という嵐が過ぎ去るのを、首をすくめて待っている。すべてが終わって、ほとぼりが冷めればまた密輸を始めるのだ。国境地域に住む人々は、民間人だろうが治安機関の職員だろうが、中国との密輸やその上前を撥ねること以外に生きていくすべを持ち合わせていないからだ。

そのため、取り締まりのやりすぎは国民の不満、ひいては社会不安へと繋がる。そうなれば、当局も取り締まりの手を緩めざるを得ない。根本的な問題解決なしに、いくら取り締まったところで、その場しのぎにしかならないのだ。

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