かつて、北朝鮮国民から散々な評判だった北朝鮮の国産品。質もデザインも悪い上に、テレビには登場するのに市場には全く出回らず、入手な困難なものもあった。ところが、最近では必ずしも評判が悪いというわけではない。
軽工業の振興と人民生活の向上を進める金正恩党委員長の政策に、トンジュ(金主、新興富裕層)が呼応する形で国営企業に投資、多くの工場に新しい設備が導入されている。そこで生み出される商品群が消費者の間で評判になり、北朝鮮市場を半ば独占してきた中国製品や、北朝鮮の市場経済化を草の根から支えてきたスモールビジネスを脅かすほどになっている。
(参考記事:「不味い」と大不評だった金正恩印のお菓子セットが美味しくなった!)しかし、北朝鮮の国営企業が逆立ちしてもかなわないのが、韓国製品だ。北朝鮮当局は韓国製品の販売、所有、使用を禁止してはいるものの、その人気は不動のものになっている。
一部では禁止令の緩和が伝えられているが、中国のデイリーNKの対北朝鮮情報筋は、韓国・サムスンの携帯電話を使っていた容疑で、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の幹部らが摘発されたと伝えた。
(参考記事:北朝鮮、韓国製品の取り締まりを緩和か)朝鮮人民軍で政治指導員を務めていたこの男性は、軍除隊後に密輸で生計を立ててきたが、サムスンの携帯電話に中国の携帯電話会社のSIMカードを入れて使用してきた容疑で、摘発された。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面当局は、外国製の携帯端末、中国キャリアの携帯電話の使用を、国内情報の流出、国外情報の流入、さらには脱北に関する情報のやり取りに使われると見て、従来から取り締まりの対象にしてきた。それでもこの男性は、保衛部(秘密警察)に多額のワイロを払うか、コネを使ってもみ消すかして、問題なく使っていた模様だ。
しかし、金正恩氏の掲げる不正腐敗との戦いの一環として、朝鮮労働党の検閲委員会が平安北道(ピョンアンブクト)で行っている大規模な検閲(査察)で、摘発されたものと思われる。
(参考記事:北朝鮮版「不正腐敗との闘い」の致命的な盲点)それ以外にも、逮捕されるサムスンユーザーが続出している模様だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「今回、新義州にやってきた検閲団によって、サムスンの携帯電話を使っていた幹部が多数摘発された。階級に関係なく、もはや鴨緑江で密輸はできなくなった」(情報筋)
思想的に頭の先から足の先まで武装しているはずの軍幹部が、裏では韓国製の愛用者だったことを、当局は深刻に捉えているようだ。
しかし、北朝鮮にサムスンの愛用者が少なからず存在することは、統計で明らかになっている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面アイルランドのアクセス解析調査会社「StatCounter」は、全世界250万以上のウェブサイトにトラッキングコードをインストールする手法でアクセスを分析し、集計結果を公表しているが、今年1月に北朝鮮からインターネットにアクセスに使用したデバイスのメーカーを見ると、多い順にアップル(43.16%)、ソニーエリクソン(20.97%)、サムスン(16.11%)、ファーウェイ(8.81%)、Oppo(5.17%)となっている。
北朝鮮のネットユーザーは1万6000人であるとの統計を元に計算すると、北朝鮮には2500人あまりのサムスンユーザーが存在するということになる。