北朝鮮で最近、密輸に加担させられていた下級幹部が脱北する事件が起きた。密輸が問題視され、すべての責任を負わされそうになったためだ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、事件の当事者は道路建設の監督員を務めていた下級幹部だ。事の顛末は次のようなものだ。

地元の朝鮮労働党委員会責任書記(地方のトップ)ら地方政府の上級幹部は、商売をしていたこの下級幹部に、特産品である松の実を中国に密輸しようと持ちかけた。下級幹部は権力機関と話をつけ、松の実を運んでいたが、国境の川に落としてしまい商品価値がなくなってしまった。

ただでさえ多額の借金を抱えていた彼は「権力層のコネ」を信じて大金を投資したが、大損して家と財産をすべて失う危機に瀕した。上級幹部に「助けて欲しい」と頼み込んだが、無視された。

それだけではない。

「元々、この密輸は責任書記が進めていたことだが、最近の非社会主義現象取り締まりで検察所に摘発され、問題が大きくなった。上級幹部たちはグルになって、この下級幹部に罪をなすりつけようとした」(情報筋)

当局は、密輸のみならず、韓流ドラマの視聴、流通などを「非社会主義現象」とみなし、大々的な取り締まりキャンペーンを繰り広げているが、運悪くそれに引っかかってしまったというのだ。

(参考記事:「いい加減にしないと暴動起こす」北朝鮮国民の不満が爆発寸前

上級幹部たちはこの下級幹部が普段から「韓国に旅行に行きたい」と言っていたと嘘の証言をして、さらに貶めた。完全に追い詰めた上で、すべての責任をかぶせるためだ。

本格的な取り調べが迫り、身の危険を感じた彼は家族を置き去りにして脱北してしまった。上級幹部らは「商売でできた借金を踏み倒して逃げた」と言いふらしているが、下級幹部の家族は「あなた方のせいではないか」と抗議していた。結局、家族全員が保安署(警察署)に逮捕された。「口封じ」の意図があるものと思われる。

市民の間からは「幹部たちは自らの利益になるならいい関係を保とうとするが、不利益になりそうなら切り捨てる冷血人間」上級幹部を非難する声が上がっている。