北朝鮮の協同農場の中には、「試験圃田」と呼ばれる農地が存在する。

これは、種の改良、農法の開発、土壌の改善などの研究を行うための農地で、農業大学を出た研究者が送り込まれ、研究を行っている。

ところが、その試験圃田が目的外、つまり金儲けに使われるようになったことから、当局が取り締まりに乗り出した。農民からは歓迎の声が上がっているという。

金正恩党委員長は昨年末に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で、「農業生産を画期的に増やす」ことについて指摘する一方で、「全社会的に道徳紀綱を強く立てる」ことも提起した。

(参考記事:「世界は新たな戦略兵器を目撃する」金正恩氏、党総会で宣言

全国の共同農場には、毎年新年に党から農業関連の様々な指示が下されるが、今年に限っては総会のこともあってか、試験圃田に対する対策案を講じよという異例の指示が下されたと、黄海北道(ファンヘブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

試験圃田は、農業生産量を高めるための試験農地だが、今では幹部に贈るスイカやマクワウリなどの高価な果物の栽培に使われるようになっている。

「試験圃田は、幹部に捧げる貴重な作物を生産するために運営されおり、果たして本当に庶民の食糧問題を解決するためのものなのかわからない」(情報筋)

それに対して農民の間からは「人民はトウモロコシ飯すらなくて食べられないというのに、少なくない農地を与えられたにもかかわらず、種の改良研究はせずに、幹部の口に合わせるための道具に利用されていることを考えると悔しい」(情報筋)との恨み節が聞かれていたが、今回の措置に対しては「スッキリした」と歓迎する声が上がっている。

このような姿勢は、党が食糧問題の解決を重要課題と考えている現れだと現地では捉えられていると情報筋は伝えた。

総会での指示を受けて、黄海南道(ファンヘナムド)の農村経営委員会は、各協同農場の試験圃田の面積と土壌を調べ直し、内閣の農業省に報告した。また、過去7年間に試験圃田で栽培された作物と、達成された研究結果も報告書に含めた。

どのような成果があったのか、どれほどの金儲けに使われていたのかを綿密にチェックし、農繁期を前にして、綱紀粛正を図ろうという意図があるものと思われる。

また情報筋は「総会の決定書に基づき、農業大学や畜産大学の卒業生が試験圃田に配置されると予想されている」と伝えた。

「卒業生がやって来れば、正式に試験圃田を任せ、中身のある科学営農法の実験、研究を行い、農業生産増大のために現実味のある事業を行うだろう」と複数の農場幹部は見ている。

一方で、「彼らが農場に来たとしてもより上を目指す踏み台にされるだけだ」「今のような状況で誰が農村に定着するのか」といった反応も聞かれるという。

平壌や他の地方都市と比べて様々な面で遅れていて、ただでさえ誰も行きたがらない遅れた農村に積極的に行こうとする人はまずいないだろう。それどころか、借金まみれになって農場を去り、都会に働きに出る農民が後を絶たないのが現状だ。

(参考記事:北朝鮮版「ゴールドラッシュ」…砂金採りに賭ける農民の希望と現実

ちなみに北朝鮮で最も有名な試験圃田は、平壌郊外の錦繍山(クムスサン)研究所のものだ。朝鮮半島で一般的なシラヤマギクのナムルが食べたいという金日成主席の要望に応じる形で、金正日氏は研究所を設立、試験圃田で1年中シラヤマギクが栽培できるように研究を進めさせた。現在では、金氏一家の食卓に上がる農産品を生産しているこの研究所には、80人の技術者と250人の労働者が従事していると言われている。

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