朝鮮半島で初めて開通した鉄道は、1899年にソウルと仁川を結んだ京仁線だ。1905年にはソウルと釜山を結ぶ京釜線が、同じ年の11月にはソウルと新義州を結ぶ京義線が開通し、現在の北朝鮮の領域にも鉄道が登場した。

鉄道網は朝鮮戦争で大きな被害を受けたが、わずか数年で復旧した。この時、金日成主席は「我が国は電力が豊富なので必ず電気鉄道を敷設しなければなりません」と教示した。

当時の北朝鮮は、世界最大級と言われた水豊ダムを擁し、石炭などの燃料も豊富だったこともあり、鉄道の電化工事が経済発展に結びつくと考えられたのだ。その結果、北朝鮮の鉄道の電化率は80%に達した。

しかし、1990年代からは発電施設の老朽化、燃料不足、そして深刻な経済難により極度の電力不足に陥る。そして、高い電化率がアダになり、鉄道がマヒ状態に陥った。

(参考記事:東京から岡山まで10日!? 電力難が招く北の「鉄道崩壊」

そんな満身創痍の鉄道を現代化せよとの指示が国家から下されたが、現場では困惑が広がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の幹部によると、中央から「鉄道運輸部門における改造現代化事業を推し進め、鉄道を通じた輸送能力を向上させ、物資輸送を正常化することについて」という指示が下された。同時に鉄道の関心と投資を集中させるとして、投資事業計画を公表した。その内容とは、毎日6万トンの貨物輸送能力を無条件で達成せよというものだ。

具体的には、金鍾泰(キム・ジョンテ)電気機関車連合企業所と元山(ウォンサン)鉄道車両連合企業所など、全国の鉄道関連の企業所の稼働を正常化させ、1年間に電気機関車100両、貨車3000両の生産能力を備えるようにするという、野心的過ぎるものだ。また、平壌など主要駅の長年放置された線路の復旧や、老朽化した車両の置き換えも行うという。

両江道(リャンガンド)の幹部は、同様の指示を受けたとし、同時に先日、竣工式が行われた平安南道(ピョンアンナムド)の陽徳(ヤンドク)郡温泉文化休養地に接続する鉄道工事を一日も早く終了し、観光客の交通機関の不具合を解消せよとの指示と、白頭山青年線などの線路の点検と補修を早く終わらせろという指示があったと述べた。

(参考記事:金正恩氏、温泉リゾート地の竣工式に参加

数百人単位の死者を出す鉄道事故が繰り返し起きてきたことを考えると、鉄道設備の点検、補修の実施を命じることそのものはまっとうだ。しかし、国からそのための予算は配分されたない。他の事業同様に「自力更生で解決せよ」ということなのだろう。

先立つものもないのに、点検、補修を越えて、出来もしない鉄道関連企業の稼働正常化、設備生産能力の向上を求めるところが、北朝鮮的だと言えよう。新しくて大きなものを完成させてこそ、金正恩党委員長の実績に繋がるということだ。

(参考記事:死者数百人の事故が多発する北朝鮮の「阿鼻叫喚列車」)

無理難題を押し付けられた現場の担当者は途方に暮れ困り果てている。金正恩氏が旗振り役となり国家的プロジェクトとして進められている三池淵(サムジヨン)や元山葛麻(ウォンサン・カルマ)の開発事業ですら、資金や資材の不足で度々中断を余儀なくされている状況で、鉄道現代化事業に国の予算を期待するのは無理だ。

情報筋は「今のような国の支援と技術力では、中央が要求する鉄道現代化事業を行うのは難しいので、外部(外国)の支援なしでは鉄道の正常は不可能だ」と述べている。

(参考記事:金正恩氏のメガプロジェクト、資材が足りず工事ストップ

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