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1990年代後半の未曾有の食糧難「苦難の行軍」。多くの子どもたちが親を失ったり、親に捨てられたりして、路上で暮らすようになった。北朝鮮では、そんな彼らのことをロシア語由来の言葉で「コチェビ」と呼ぶ。

コチェビは子どもたちだけではない。相次ぐ自然災害、国中に大混乱をもたらした2009年の貨幣改革(デノミネーション)、そして昨今の国際社会の制裁で、路上に追いやられた人々の中には、大人も大勢いる。

(参考記事:【在中北朝鮮国民インタビュー(1)】水害で急増する大人のコチェビ

また、そうしたコチェビを狙った性的虐待や強制労働、殺人などの凶悪事件も続発している。

(参考記事:「キムチの下に少女を埋めた」レイプ殺人犯に無期懲役の判決

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の山間の町、虛川(ホチョン)にはそんな彼らを雇って農業を営む一家がいた。善人かと思いきや、とんでもない悪徳一家だった。現地のデイリーNK内部情報筋が、この一家の悪行について伝えた。

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一家の主、60代の男Aは元々、地元の果樹園で作業班長を勤めていた。何らかの問題行動が摘発され、3年前に職を追われたが、果樹園の農場管理委員会と話をつけ、果物の木の下の土地を使って、大豆や小豆を栽培を行い、生計を立てていた。

ところが、栽培面積があまりにも広く、家族の手ではまかないきれなくなった。そこで一家は、隣の港町、端川(タンチョン)の駅やバスターミナル、市場をねぐらとしているコチェビ数人に声をかけ、「寝床と食べ物を提供する」と言って、労働者として雇い入れた。

腹いっぱい食べられて収入も得られると喜んでいたであろうコチェビたちを待っていたのは、強制労働と虐待の日々だった。

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仕事で少しでもミスをするとムチで叩かれ、食事は1日に粥1杯だけ。逃げられないよう、一家は交代で彼らを監視し、虐待したという。

そんな悪行三昧が長く続くわけがない。地元住民が、3カ月前に家出した息子が果樹園にいることを知り当ててやってきたのだ。そこで彼が目の当たりにしたのは、虐待されながら働いている息子の姿だ。そればかりでない。連れてこられた何人ものコチェビが死んだことを知り、彼は保安署(警察署)に駆け込んだ。

一家は逮捕された。取り調べでAは、2年間で5人のコチェビを死なせ、遺体は山に埋めていたこと、死んで人手が足りなくなると新たにコチェビを連れてきて虐待していたことなどを自供した。

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10月の初め頃に虛川の市場のそばの通りで行われた公開裁判で、A被告には無期懲役、家族には懲役5年以上の刑が言い渡された。コチェビを強制労働させていた一家だが、今度は自分たちが強制労働させられる立場になってしまった。

(参考記事:北朝鮮の刑務所「教化所」の実態

北朝鮮では国が率先して国民を様々な工事現場に半ば強制的に動員し、過酷な労働を強いている。亡くなってもまともに補償するどころか、現場の責任者は責任から逃れようとするばかりだ。コチェビの扱いはより一層ひどく、事故で亡くなっても見殺しにされてしまう。

国がそんなことをしているのに、国民に示しがつくわけがない。

(参考記事:「15万人の血と涙」で建設が進む金正恩氏の「ブラック・リゾート」