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「種、肥料、農薬など政府からもらえた分だけでも正直に使えば、農業がうまくいかないはずがない」

つまり、農民が供給された種、肥料、農薬を横流ししているとのストレートな批判だ。そんな批判を聞きながら内心怯えていた農民も少なかったのではないだろうか。

私腹を肥やしている者もいるだろうが、のっぴきならない事情を抱えた人も少なくないだろう。北朝鮮の農民は、毎年春に高利貸しからトウモロコシなどの食糧をカネの代わりに借りる。秋の収穫後に利子を付けて返すという条件だが、返済に行き詰まる人も多いと言われている。そんな借金を返すために、供給された肥料や種などを売っている農民もいると思われる。

(参考記事:借金取りに追われる北朝鮮の農民「返せない」と開き直る

それをフォローするかのように、農場幹部の討論では、農業用具の窃盗が深刻であるとの指摘とともに、農業がうまくいくには農民の生活保障が必要との話も出た。また、個人の畑の作物があまり育っていないのに、協同農場での農作業に打ち込めというのは現実的に難しいとの指摘をした幹部もいたとのことだ。

この「個人の畑」とは、圃田担当制に基づき、農場が農民個人に貸し与えた土地のことを指す。家族単位で畑の世話をして、得た収穫の一部を農場に納めれば、後は自由に処分できるというインセンティブ制度で、農民のモチベーションを高めるために一部で導入されているが、成功と失敗の両方の事例があり、その評価は定まっていない。

(参考記事:進まない北朝鮮の農業改革にやる気を削がれる農民たち

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収穫が多いと称賛された農場の幹部は、農民の暮らしの安定にもかなり気を使っている。