自国に滞在する北朝鮮労働者を送り返すことを義務付けた国連安全保障理事会2397号の期限が今年末に迫る中、北朝鮮当局による労働者搾取がより過酷になりつつあるようだ。

派遣先のロシアで4年間働いていた北朝鮮労働者が、ひどい搾取のせいでほとんど儲けられなかったことを悲観して自ら命を絶ったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

ロシア在住の高麗人(朝鮮系ロシア人)情報筋によると、事件が起きたのは今月8日のことだ。ウラジオストク市内の建設現場で、30代後半の北朝鮮労働者が建設中のビルの12階から身を投げて自殺した。

別の情報筋によると、この労働者はボロ布同然の作業服を身にまとい、ツギハギだらけの靴を履いたまま倒れていたとのことで、目撃した人々は心を痛めている。

この男性は4年前、朝鮮労働党中央委員会の外貨稼ぎ機関、39号室傘下の対外建設指導局から建設労働者としてロシアに派遣された。情報筋は触れていないが、海外派遣労働者として選ばれるに当たって相当額のワイロを幹部に渡していたであろうことは想像に難くない。

ところが、働いても働いても手元にはほとんどカネは残らなかった。北朝鮮当局による搾取があまりにもひどかったからだ。

ロシアの現行の最低賃金は1万1163ルーブル(約1万9550円)。この男性がどれほどの稼ぎを得ていたかは不明だが、1人あたり毎月5万ルーブル(約8万7500円)を北朝鮮当局に上納することを強いられていた。

そこに加えて国家的プロジェクトである三池淵(サムジヨン)郡の再開発と元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区の建設資金の上納も強いられ、宿舎の家賃、光熱費、食費は個人負担となっている。そのため、石鹸などの日用品、タバコ銭にも事欠く有様だった。

それも、冬場は仕事が減るため、複数の現場で1日14時間から16時間も働かざるを得ない状況に追い込まれていた。北朝鮮での借金を返済し、帰国してからの商売の元手を確保するには、滞在期間を延長するしかない。だが、そのためには所属機関の複数の幹部にワイロを渡さなければならない。

結局、4年間働いて、彼の手元に残ったのはわずか1000ドル(約11万2000円)だったという。

別の情報筋によると、この労働者は数日前、体調が悪く休もうとしたところ、所属機関の代表に罰金50ルーブル(約88円)を要求されたという。そのことは後に知れ渡り、周囲の人々を激怒させている。

このように、一旗揚げようとロシアに渡ったにもかかわらず、ひどい搾取に悩まされた末に、逆に借金を抱える羽目となり自ら命を絶つ労働者が後を絶たない。2015年の大晦日には、過重な負担に苦しんだ労働者が、体にエタノールをかぶって火を付け、自殺を図った。

人権侵害の温床と国際的に非難されている労働者海外派遣だが、北朝鮮当局はなんとか続けようと画策しているようだ。

ロシア下院代表団の一員として北朝鮮を訪問したフェドット・トゥムソフ議員は、北朝鮮当局から自国労働者のロシア残留を求められたと述べたと、インテルファクス通信が報じている。

労働力不足に悩むロシアとしても、北朝鮮労働者を引き止めたいというのがホンネだろう。

(参考記事:外国人労働者と大乱闘も…米国が懸念する「奴隷労働」の実態

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