兵役制度を導入している国は世界的に減少しており、兵役の期間も徐々に短くなる傾向にある。韓国陸軍を例に挙げると、長年にわたり30ヶ月から36ヶ月だったのが1993年に26ヶ月に短縮され、その後も徐々に短くなって、現在は21ヶ月、来年6月からは18ヶ月となる。

一方、世界で最も兵役期間が長いことで知られる北朝鮮では、時期によって多少の増減はあるが、10年が基本だ。12年の義務教育を終える満17歳になると徴兵検査を受けるのだが、兵役期間中に問題を起こす若者が増えていると伝えられている。

それを防ぐために、徴兵検査を受けるには保証書が必要となる。デイリーNKは今月5日、その「入隊保証書」の入手に成功した。

入隊保証書には「政治道徳的に健全で健康であるので、人民軍入隊を保証します」との一文があり、その下には5人の保証人の名前と署名の欄がある。

卒業を前にした生徒なら担当の教員、身体検査で一度不合格になり職場に配置された後、改めて軍入隊を希望する場合は職場の作業班長の保証が必要となる。また、健康を保証するのは医師、当人の思想に問題がないことを保証するのは地域管轄の保安員(警察官)と保衛員(秘密警察)だ。

入隊保証書を提供したデイリーNK内部情報筋の説明によると、2000年代までは学校または職場の責任者1人だけの署名があれば足りたが、2010年頃から保証人が5人に増えた。

保証人がいなければ身体検査を受けられない。卒業証書、青年同盟員証、学校の担任や職場の責任者の推薦書があっても、この保証人を確保できなければ、身体検査のための登録すらできないのだ。その背景には、軍隊生活に耐えられない今どきの「若者事情」がある。

90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の前後に生まれ育った若者は、子どものころに十分な栄養摂取ができず、身体が虚弱な者が多いとされる。しかし北朝鮮当局は、少子化が進み若者の数が足りないため、数合わせのために身長145センチ、体重43キロ、視力0.6以上なら入隊を認めるよう基準を緩和した。ところが、実際に入隊しても軍隊生活に耐えられず、脱走してしまう者もいる。

(参考記事:少子化止まらぬ北朝鮮、兵役延長で労働力確保へ

また、軍隊は食糧不足が深刻で、それなりに食糧のある一般社会で育った若者が耐えられずに逃げてしまうこともある。

(参考記事:「指揮官が遅刻するから戦闘準備できない」金正恩氏のポンコツ軍隊

「軍隊に行けば英雄になるかもしれないが、犯罪者になるかもしれないのが今の現実だ。それで思想教育や人間性教育をしっかりしておけという意味合いも(保証書には)ある」(情報筋)

また、保証人が5人もいることで、「非行」を抑止するプレッシャーとなるのと同時に、若者が入隊前に「自分は本当に軍隊でやっていけるのだろうか」と考えるきっかけにもなっているようだ。

北朝鮮の入隊保証書(画像:デイリーNK内部情報筋)
北朝鮮の入隊保証書(画像:デイリーNK内部情報筋)

    関連記事